『未体験』
恒星がやがて
逃れられぬ時の定めにより
まぶしい超新星爆発の時を
迎えるように、
いろいろなことがあった一年の終わりには
いつも変わらず
大掃除の時がやって来る。
熱力学の第二法則が
宇宙の隅々まで手を伸ばすので、
部屋が散らかるのも仕方がないので
慌てて片付けることもないだろうと
思っていたのだが──
毎年、先に片づけをした妹たちの
おもちゃや人形や電車の模型で
物置は埋まってしまう。
もしかすると早めに掃除に手を付ければ
物を運び込むときに
効率が良いのではないか──?
そう思ったのだ。
果てにたどり着くのが不可能であるほど宇宙は広大だが
それに比べると、この地球はちっぽけで
好きな本を置く場所にも苦労する──
なるほど、大掃除とは
宇宙のロマンに思いを馳せることでもあるのだな。
この感覚は初めてのものだ。
しかし、星は慣性によって宇宙を旅するけれど、
人の身では、ちょっと動くだけでエネルギーを使うのも
不公平な気がする。
ふう、今日はずいぶん働いたな。
このくらいでそろそろ休憩をとるのもいいだろう──
英気を養うのに大事なことだから抜かりなく
おいしいおやつを戸棚に取っておいた──
ああそうか、大掃除とは
後に待っている楽しみを思いながら
するものでもあった──
小さな人間には
身の丈にふさわしい喜びもある。
宇宙とくらべて自分がどれだけちっぽけでも、
本を読みふけって
片づけが思ったほど進まなくても
何も気にすることはないのだ。
明日──宇宙にとっては小さなたった一日に、
疲れ切って動けなくなることがなければ
私はまたエントロピーの法則に果敢にも抵抗し
その後に待つおやつを心待ちにするのだろうが
いったいどうなるかは
今はまだだれにもわからない。