氷柱

『予定は早めに』
あーっ!
また!
あさひが膝に乗って
足がしびれてる!
どおりで──呼んでも来ないはずだわ。
私が来てほしい時に
すぐ現れないなんて
まったく。
いつも言ってるでしょう?
あなたは我が家の
たったひとりの長男。
みんなが何を言っても、
引っ張り合いの奪い合いの
標的にされても
私の言うことを
聞いてくれるなら──
ずっとおうちにいてもいいし
困ったことがあったら守ってあげることも
できるのにって。
あさひが甘えて
離さないようにして、
心配しなくたって
下僕はどこにも行かないわ。
ご主人様がいるのは
この家だもの。
え?
何の用で
探していたのかって?
ええ、そうよ──
年も押し迫り
人々もどことなく
せかせかと急ぎ足。
浮ついた時期に
いつも優柔不断な下僕がしっかりしているか
確かめておかないと──って
そう思ったのだけど!
案の定、
あさひにまで舐められているだなんて──
いいこと!
仕方ないからするべきことだけでも
忘れないようにするの!
例えば──
ついうっかり、
クリスマスにお友達と予定を入れて
帰るのが遅くなったり──なんてことがあったら
みんなで大事な日を過ごす家族の約束が
台無しになってしまう。
とりあえず今日のところは──
それだけ釘を刺しておかないと
万が一のことがあるいけないもの。
まさか、もう
予定を入れてしまったなんてことは
下僕に限って──ないわよね。
誰にも誘われたりなんて
しないはずだし──
もし、私に黙って
変な相手に声をかけられたりしていたら
許さないからね!