『冬の訪れ』
うーっ、さむいさむい。
今月のはじまりくらいには
確か──
こんなに暖かく
過ごしやすくて、
薄着の子供ばっかりで
蛍ひとりが心配しているよう。
本当に──今年も
あの冷たく凍える
おそろしい
冬はやって来るのだろうか?
ずっと先になってからのことみたいに
考えていたのに。
暖房を見つけては
根が生えたように動かなくなり
お兄ちゃんを見つけては
おしくらまんじゅうをしながら
寒さを乗り越える日々が
どうやら今年もやってきたような気配──
窓の外をゆれる秋の紅葉も
すっかり少なく
たよりなく──
日なたをのんびり歩くのらねこまで
やせてしまったみたいで
心細い眺め。
お兄ちゃんと見つめる景色が
これではどうも、
せっかく通りがかったところを呼び止めても
お茶とお菓子で
足止めできずに
すぐにみんなのところに行ってしまうようなの。
ふたりで──あんなにキッチンのそばで
まったりすごしていたのに
こたつには勝てない
妹の定めなのかも──
青空ちゃんはつまみ食いにちょろちょろ元気で
寒いねって声をかけても
雪が降るまでは寒くない!
雪は!?
まだ!?
まるで蛍が雪を降らせる人みたいに期待している。
そうですね、寒くなれば
きれいな雪が降る静かな日も──楽しみだもの。
キッチンから見える窓の外が
もう少し本格的な冬になったら──
お兄ちゃんとまた季節のお話をして
今度は飲み物も焼けるような情熱の温度、
ふたりなら
なにもかもが楽しい
本物の冬が来る──
早くそうなればいいな。
今のところは、みんなが震えるところへ
駆けて行って
心配する──
うるさいお姉さんです。
お兄ちゃんも寒そうにしているところを見つけたら
つかまえてしまいますよ。
気を付けてね。