麗

『虹子ちゃんは踊る』
虹子ちゃんが──
踊っているの。
お風呂上りに
パンツ一枚で。
正確には──
ヒカル姉さまの大きいシャツを
浴衣みたいに着込んでいたけれど
どこかへ行ったみたいだわ。
もうすっかり
裸なんかでいたら
風邪をひく季節だというのに──
子供ではそんなことはわからない。
追いかけても
名前を呼んでも
この夏に覚えた盆踊りに夢中。
虹子ちゃんが言うには
どうやら──
夏の気分で
踊りだせば
知らないうちに夏に戻っていると
思い込めるのでは？
みたいな話をしているわ。
お外の夕暮れが
こんなに早くないと思えば──
晩ご飯の前のぎりぎりまで遊んでいてもいい気が
してくるかもしれない。
花火も遊べるかもしれない。
暗い夜道を帰ってくる霙姉さまが
怖くならないかもしれない──
霙姉様も、いい年なんだから
本気で言ってるわけではないと思う。
だいたい本当に怖いとして、
別に虹子ちゃんが踊ったら
怖くなくなるなんてことはないわ。
ないと思うわ。
たぶん……
明るくなるのはその場の気分だけだもの……
あなたも秋が来てから
暗い帰り道が
怖いと思う？
何か対策がある？
虹子ちゃんにアイデアを
教えてあげたら──
お風呂上りに追いかけっこをする家族が何人か
風邪をひかないで済むに違いないわ。