『輪転』
涼しげな音で
川は下り──
海へと着いた流れはやがて
雲となる──
宇宙の隅の小さな星でも
自然の営みは
回る円環のように続いていく。
いつか塵となって消える時まで──
くるくると巡る
そのありようを──
雨音が屋根を叩く夜にふと思うと、
私たちもやがて塵となるさだめの同じもの、
命も定めも巡りまわって
姉から教えられたことを
妹に伝えていく輪の存在を
考えることがある──
そう、たとえば。
私が買い出しのお手伝いに向かえば
必ずいつも、
日頃のいい子ポイントを蓄えておいた分の
お菓子を買っていいという許可を
もらっては──
じっとお店で悩んでいた時間があったものだと
よく思い出す。
そうして今は
頑張り屋で元気が有り余っている妹たちに
いい子でいた分だけ──
好きなものを選ぶ時間を譲るのが役目なのだと
ときどき思うのだ。
でも、実際には
今日の買い出しは私一人の仕事だった。
ひとりだった──
コロナの影響があってはもう
子供をいつでも連れて行くというわけには
いかなくなったからな。
少人数で買い物に向かうのも
この激動の日々を生きる者の定め。
やがて塵になる者たちは
どうにかこうにか見えないウイルスと戦い続けている。
でも、流れる雨がまた雲に戻るように
私が伝えるべきことがあったとしても──
この状況ではなかなか
今まで通りにはいかないようだな。
しばらくは今まで通りにいかないのは確かなのだから
かわいい妹たちのいい子ポイントについても
使い道を新たに考えないといけない時がやってきた。
星は巡り──
時は流れ──
子供たちはお菓子の入手先を新しく求めるものなのだ。
きっと昔からそんなふうに
大きな円環は回っていたのだろう。
……勢いで言ってみたが、本当にそうなのか?
まあいいや。
このままでは大喜びの子供たちから
最新のお菓子を一口もらって普段は得られない知識を得るという喜びも
なかなかできなくなってしまうことだし。
策を考えるとしよう。
通販を試すか……?
いや、それともせっかく家にいるんだから
材料を仕入れて流行りのお菓子に挑戦……
でも私が作ったら、妹たちのご褒美にならないのではと
客観的な視点が告げている。
うーん──
みんなのことを考えて
ゆっくり悩む時間も取れるなら──
それだけで悪くはない気がするけれど──
早くいい答えを出して、喜ぶ顔が見たいというのも事実だ。
やがて同じように誰かのために悩む妹たちも
こんな難しい気持ちを分かってくれるだろうか。