『私のおもちゃ屋さん』
小さくなった服は
妹のところへ。
ほつれた服は
蛍姉様か春風姉様に
繕ってもらうの。
魔法のような指先で
のびたゴムも切れた糸も
新品同様──って褒める子もいるから
そういうことにしておきましょう。
それでもどうも
古くなってしまったら
次は雑巾の繕い方を
習う番。
おうちではだいたい
できなくもないという子が多いから
雑巾の作り手には
困るということはない状況ね。
ごくたまに
氷柱姉様があわてた様子で両手に抱えて
運んでいく雨の日もあるみたいだけど、
ちょっと様子を見た感じ、
そんなに量が必要でもなさそうね。
服はいっぱいあっても
結局どこかに居場所が見つかるものだけど。
ところで、話は変わるようだけど
あなたはまだ不器用で細かいことも苦手で
お姉ちゃんたちからさんざん世話を焼かれる
小学生くらいの子供の時、
おもちゃが壊れたら
どうしてた?
ぜんまい仕掛けに
ばねにモーター、
金具とねじの複雑な構造を
うまく直せない子だって
それはいるに決まってる。
設計図の通りに
元に戻したはずなのに──
世の中は理屈に合わないことでいっぱいね。
自分のことだけで手がふさがっているのに
もっと手先の器用さに自信のない
姉や妹たちは──
なぜか私のところに相談を持ち込むことが
なくはないのよね。
がんばっても
成功率は半々というのが
いいところなんだけど、
できそうにないって断るのも
一応は中身を確認してからにすべきだろうし──
説明書もないまま分解すると
もう元に戻らないとは
説明しておくんだけど
それでも本当に戻らないと
しゅんとした顔になるのが普通だし。
もしも家族に
上手じゃなくても
根性でおもちゃの修理をするスキルを持つ子が
いないおうちでは
いったいどうしているのかしら。
あなたは知っている?
いえ、知っていたとしても
特に問題の解決には役立たない気がするわ。
電池を変えるだけで直るおもちゃが
この世の故障のすべてであればいいと願うの──