『ヴァンパイアキラー』
春ののどかな
日は続き──
時間がたくさんあるからと
家中の掃除に駆り出され、
まだまだ時間があるからと
家族で雑巾がけまでする。
別に──
全ての時間を効率的に使う
必要もないと思うのだ。
人には心の余裕が必要だし、
体を上手に休めるためには
日々の経験を積み重ねるのもよいと
考える者もいる──
もちろん、
それが私だ。
どうだろう?
いい言葉だと思わないか?
もっと広まらないかな。
急に休めと言っても
そう簡単にいかないというのが
世の中の常識なら──
もう少し常識に対して柔軟になるのも
一つの手ではないかと思う。
何の話をしていたんだったかな?
ああ、そうそう。
さすがに掃除続きは大変だなあ、という話か。
いや違う、体を休める技術についての話だった。
ついうっかりしたな。
だいたい、どこもかしこも
私たちの住む家がピカピカになって
これがみんなの感謝の気持ちと言っても
まだ何かやり残したことがある気がすると
タフに歩き回る蛍のような子には
普段からよく働いて
この機会に感謝の気持ちを受けるべきは
このような子で、
肩でも揉んであげるから
そのまま──
気持ちよく昼寝にでも落ちて行き、
そうして優雅な時をもっと持つべきだと
いつも言っているんだ。
ん?
だらだらしようみたいな誘いに聞こえるな。
普段から私が言っているからよくないのかな?
何の話だったかな──
私も昼寝でもしようかなという話だったか。
いや──
うーん、まあ細かいことにこだわっても仕方がないし
それでいいか。
うん、明日の仕事は
家中の枕の具合を確かめるくらいにしておくのはどうかな──
がんばったみんなに私からのご褒美ということにして、
自分に合う枕やクッションを見つけて
横になるコツなどを
もっと広めたいと常々思っているんだ。
そんなことだからいけないと見られていそうな気もするな。
細かい話はまあいいか──
役に立つ技術を伝えることに
誇りを持つほうが優先されるべきだと
オマエもそんなふうにのんきなことばかり思う日があってもいいんだぞ。
今なら何もかも
春の暖かさがいけないせいにもできそうだ──