ヒカル

『思い出と』
声を聞いただけで
楽しかったことも
その日々を過ごしていたいろんな思いも
ぱっと蘇ってくるような瞬間が
あるらしいと──
どこかで聞いたことがある。
きっと入学式の写真を見て
思い出す時も、
そんな感覚になるのだろう。
緊張したこと──
不安だったこと──
それに何より
新しい始まりを迎える予感で
胸がふくらんで
いっぱいだったこと。
今日の機会にアルバムを広げて
みんながそれぞれ、
その時の気持ちを話したくなってるみたい。
ふふ──私も聞いてもらえるかな。
同じようなことしか話せないけど。
何もかも未経験の場所に
踏み出す時の
あの記憶が、
まだ小さかったこともあって
なんだか楽しみな気持ちばかりだったような
思い出になってる。
怖かったり
海晴姉や霙姉の手をぎゅっとつかんでいたことも
忘れたわけじゃないはずなのにね。
今年はいろいろ大変なこともあるけど
今のところはどうにか、
対策を充分に考えて
私たちもできることをしようとして──
入学式の日を迎えた子がいる。
ユキにとって、この日の思い出は
帰ってすぐのうがい手洗いで
みんなに褒めてもらった記憶ばかりじゃなくて
たぶん何か
言葉で説明するのは難しい
大切な日に──
なっていくといいよね。
立夏も中学生、
私たちも高等部に進学!
中高一貫でそんなに変わることもない私たちだけど、
将来は今日の日の写真を見直す目も変わってくるのかなあ?
心細さでぎゅっと誰かの手をつなぐことは
もうないかもしれないけど──
また新しい場所が私たちを待ってる。
心配なことがあるなら
せっかくの同じ学年だ。
手をつないであげるから
一緒に行こう。
これからも──どうかよろしく。
この先ずっと、
何か始まるときには一番すぐそばで
お前といるのかもしれないな。