海晴

『物語のはじまり』
吹雪ちゃんが
何やらこちらを見つめて
上から下まで
余すところなく
お姉さんを、
詳しく観察しようと
しているような──
何か私から
学ぶようなことが
あるのだろうか……
お天気お姉さんなのに
予報の正確さはいまいちだし
お掃除もお洗濯も
直観頼りのなりゆきまかせ。
子供が参考にしたがることといえば、
まさか!
おしゃれ!?
でも、かなり
スタイリストさんのアドバイスのおかげだし──
これでは
自慢するところが何にもないお姉さんなのでは!?
なーんて。
どうも私が子供みたいに
みんなと輪になって歌ったり
踊ったりしていると
野生動物がえさを見つけた時みたいに
鼻をひくひく、耳をぴんぴん、
きらきらした目──
みたいになるの。
そんなに不思議なことかな?
大人のひとがくねくね踊りだすのは。
私はただ、
気持ちを伝える時に
難しいことはしなくていいし、
家族の前ではなおさら
隠し事なんてできないと思うだけ。
原因としては
不器用さと
開き直りと、
そう!
大人になったら
目的のために手段を選んでいる余裕が
ないだけなの!
ただ、みんなに
一緒にいてくれてうれしい、
いつも大好きなんだと
教えてあげたいだけ。
こんな単純な答え、
吹雪ちゃんならすぐに見抜いてしまうにきまっているわ!
簡単な長女だと思われてしまったら
どうしよう──
ま、いいか。
その通りなんだし
ごまかしきれないし!
弟くんも、吹雪ちゃんを見かけたら
海晴お姉ちゃんは素敵な人だなあ、
かっこいいなあって
吹雪ちゃんを失望させすぎないように
協力してね!
少しはいいところもあると思うよ。