ヒカル

『適材適所』
にぎやかな声が
家の中から──
裏山の入り口の
辺りまで聞こえてくる。
広場というには
そんなに子供が自由に駆け回れるほど
広々としていなくて、
レジャーシートを敷いたら
小さい妹を含めて20人なら
どうだろう?
いけるかな?
詰めれば──なんとか。
といった感じ。
でも、このくらいのほうが
お花見の代わりには
いいのかな。
掃除もすぐだ。
まだまだ桜の眺めは
花の色よりも
硬い皮に守られた枝のほうが目立つほど。
でも、おうちにお天気お姉さんが
いる限り──
雨や曇りの下でのお花見に
甘んじるわけにはいかないと、
堂々と宣言する
海晴姉の勢いで
今日のお昼は急ごしらえのお弁当を抱えて
お日様の下だ。
職業柄というより、
ただ単に、にぎやかなことが
したかっただけなんじゃないかなと
私は思うんだ。
明日の曇り空を
今からもう見つけたみたいに手庇から眺めて、
明日も
またここでなんて
いいね!
と話すくらいだし。
強引な海晴姉のため、
私たちは今夜のうちに
ちょっと肌寒い午後の重ね着を
用意しておくべきなのだろうか?
でも、よかった。
ちょっとくらい強気に
手を引いてくれる人がいたほうが
お昼ごはんは──
にぎやかだ。
とはいえ、みんなで参加するものは
みんなで用意するべきと
不格好な形のおにぎりが増えたことについて、
増やした当人の立場では
いいとも悪いとも、
うーん──ノーコメントでいいか。
その分、普段から慣れてるこんな掃除で
貢献できていたらいいけどね。
明日の花曇りの
肌寒さの中で
過ごす準備は、
お前はもう済んでいるか?
風邪なんて引いたら
暇を持て余すみんなのいいおもちゃになっちゃうぞ。
今日のジュースやコーラより
ほっと暖かい麦茶にミルクセーキ
懐かしい味がうれしくなる
あの楽しかった冬がまだ明けきらないようなもどかしい日を
もう少し──
私たち家族で過ごせたらいいな。