観月

『花縵』
どこからか歌が
聞こえてくるな──
にぎやかで、
楽しそうで
とてもゆかいで──
幸せそうな気配がする。
今日は庭も暖かく
日差しは優しく、
窓からの眺めはと見たら
あとはもう大きくなったつぼみが開けば
もうおにぎりを抱えて
出かけたくなりそうな──
そんな頃になっていたのだな。
お部屋のお花は
ごひいきのお花屋さんから
届けてもらったものだが
きれいな桃色と
おいしそうな飾りつけの
ちらし寿司がそろうなら
ここは一年に一度の
お雛祭りの日を
いちばん楽しんでいると
言ってもいいような気がしてくる──
ひなあられの取り合いでけんかになっても
すぐ仲直りして遊んでおるな。
わらわのぶんをあげるほどでもなかったようじゃ。
女の子の
幸せを──
みんなで存分に願っている
楽しいお祭り。
もう千年も前から
この日になったら
女の子のいるおうちは
うきうきすると決まっておる。
なぜそうわかるのか、と?
ふむ、それはじゃな。
むかしの人が
伝え続けるから──
今日はこんなに
楽しかったと
いくらでもわらわにおはなしが届く。
兄じゃもそうであろう?
たくさん知っているはずじゃ。
こんなにいい日を
みんなが待っているんだと──
暖かいお祭りの日なのだと。
それにかわいい衣装も華やかで
浮かれる子が多いな。
蛍姉じゃがよなべをしたぞ!
人気のお着物は
やっぱりお花の柄かの。
千年前の記録から
変わらず人気がある定番と言ってよいであろう。
聞いたことがあるぞ。
おばあが若いころも
お花のおしゃれは人気だったそうな。
海の向こうの国から届く
平和を願うお歌と
お花のおしゃれの取り合わせで
世界はおおよろこび。
やはり、流行はめぐるもの。
愛と平和の祈りもまた──
きっとそうであると思う。
春の香りのするお部屋に
元気な子供たち──
今日はめでたい日じゃ。