吹雪

ブラックボックス
ポケットをたたくと
ビスケットは──
ふえる。
原因と結果だけを取り出して
観察するとしたら、
目の前でみるみる飾りを付けられ
増えていく雛人形の数は
何を入力した答えであるのか?
おそらくひとつは──
霙姉が玄関の散らかりようを
眺めていたときに
後ろから忍び寄って
腕を取った海晴姉が
数合わせに誘われていたという
折り紙教室によるものでしょう。
もうすぐ近づくイベントは
歌声も聞こえ、
特別な食事の材料が集まりはじめる
それはそれはたのしいと誰もが口をそろえる
あの華やかな
ひな祭り。
キミはひな祭りが
そんなにも楽しいものだと思いますか?
食べ慣れない雛あられ、
部屋にどっしりと大きく根を張るのは
見上げるようなひな壇。
普段と違う空気に戸惑いながらの毎日──
それとも楽しいのは季節の歌の内容であったのか?
実際には我が家で多くの人数がすくすく育つ
女の子の成長を
かしこまった顔の写真にたくさん残して
終わるにすぎないのか。
ただ、興味を持って分析をするにふさわしいと言える
ひな人形の増殖は、
昔からの歌には歌われていない
特殊な出来事であり──
どうして人はこのゆかいな情景を
まだ歌にして残さないままでいるのか?
みんなは面白そうに笑っているというのに──
疑問はふくらみ、
私は果たしてひな祭りの当日までに答えを見つけるのか
確信がないまま、
歌声に引きずられるように今日も戸惑いの中を過ごしています。