『謎めく』
うーん……
不思議だ。
昨日まで影も形もなかったのに
玄関にいきなり現れた
この存在は──
もうすぐ春を迎えようとする私たちに
何を伝えているのか?
海晴姉が地元の育児の教室で覚え、
みんなの前で作って見せた
折り紙や──
小雨がプランターから
移し替えた
小さな鉢に咲く儚げな花たち。
靴箱の上には
我が家のきょうだいの様子を伝える
発見がいっぱいで、
つまりここに
はばたくちょうちょが入った虫かごも
何者かの持ち帰った結果の一つなのだろう。
バタフライエフェクト
たとえ話のように、
今この玄関先で
私たちが為す何かが
次々に起こる出来事に影響を与え
いずれ大きな嵐になることの暗示であろうか。
置き忘れたらしい帽子、
しまい忘れたおもちゃやお人形。
押し花のしおりを挟んだ本の
どれを手に取るか、あるいは手に取らないかで
未来はがらりと色を変え、
あるいは鮮やかに咲き──
または静けさと安らぎを与える。
いや待てよ、もしかすると
こうして迷うことさえも
刻々と歯車を回す
運命の手のひらの上──
弟よ、私たちは正しい答えを見つけられるだろうか?
それにしても散らかってしまっているな。
もしや、悩んでいる間もなくここを去るのが
大変な掃除のはじまりに巻き込まれない未来への道のりだというのか?
好奇心につられて散らばる色とりどりのがらくたを眺めるのが
心安らぐ楽しみを得ることとなるのか──
今はまだ誰も知らない運命の先なのだ。