氷柱

『ラビリンス』
これは、どういう──?
猫にきつねに
たぬきにうさぎ──
の、耳を頭に着けて遊ぶおもちゃ。
いわゆる
子供だましというやつね。
それにこっちは
いのししやら象の鼻。
どうも子供向けのサイズばかりでは
ないようにも見えるんだけど
大きくなってからつけるには
いくらなんでも恥ずかしくなりそうな仮装だわ。
こちらにある布の山に至っては
ひらひらフリルのスカート、パンクなジーンズと
駅員さんの帽子があるかと思うと
最近人気急上昇のYouTuberを思わせるシンプルな黒いタイツ。
やけに暑苦しく
お祭りムードの高まる中、
この家はどこへ向かおうとしているのかしら。
めったにないイベントを前にして緊張するのはわかるし
迷走も付き物。
でも結局は特別な日だからって
普段からしたこともない変わったことが
急にできるようになるわけじゃないんだから
普通にしていたらいいのにね。
というか、
女の子に生まれたら
この日は一生分の勇気を出したいなんて声が
どこかから聞こえる──
そこまではしゃぐような出来事ではないのかもしれないけどねっ!
力をもらえる魔法が
どこかから降ってくる日なんて
都合の良い話なんてどこにもあるわけないし、
いつもしているみたいに
自然にこう、
はい──
これ──
みたいな。
違うわよ!?
今のは緊張して動けなくなった時のための
予行演習なんかじゃないし、
楽しみにしていたりそのことで頭がいっぱいで
何を見てもバレンタインにつなげてしまうなんてことは
ちーっともないんだから
うぬぼれないでよね!
はあはあ……
まあ、めんどうくさい何かの記念日らしきものが過ぎ
早く平穏が戻ることを祈るわ。
できれば冷たい北風の季節が去って春が来るみたいに──
それはそれで浮かれた気分がちょっと気に入らない気もするのかな。
実際にその時が来てみなければわからないことなんて
知らないけど!