『魅惑のディナータイム』
つい、ほんの
この間のことだったと思うの。
近づくクリスマスを待ち望み、
お正月に期待をして、
豪華な特別メニューの相談をしたり
テーブルの上に山積みになるお料理の本を
それぞれが手に取って
ながめていたのは。
一年にそう何度もない
大イベントなんだから
後悔しないように食べたいものはちゃんと伝えて
おいしいものを考えつかなかったなんて言わないように
しっかり調べたりもしなくちゃ、なんて
勉強熱心な子が下心満載で
家中を騒がしくしていた頃よ。
あれからそう
時間が経ったというわけではないのに──
知ってる?
私たちのお家で
すっかり静かになった毎日が通り過ぎていくなんてことは
とても考えにくいことであるのは確かだけど
かといって、普通にしていたら
近づく次のイベントの足音を
食材と献立の名前で聞き──
嵐の予感を再び積まれていく料理の本で知ることは
なんというか
生活感があるというか
節操がないというか
いけないこととも言い切れない感じを
どう表現したらいいのかしら?
もうすぐ節分がやってきて
おいしい海苔巻きをみんなが待っているというし──
その次は甘ったるいもの好きな人たちが集う
バレンタインがやって来るのですって。
やがてひな祭り、お花見を経て
柏餅を用意し七夕を待つ日々を
食いしん坊たちに囲まれ
おいしそうに過ごしていると
そのうち気が付いたら大人になってしまっているのね。
いいのかしら──
とりあえず今日は日常のメニューということになるわ。
まずは一日一日を大事にしていきたいわね。
流されてばかりいるとたいへんだもの──
といっても、寒い日々にはだいたい鍋物とか
カレーやシチューも含めた煮込み料理が
予想できるわけだけど──
そう言ってたらどこかで話を聞きつけられて
何かの思い付きの結果、
麗ちゃんの提案でカレー鍋!
なんて不思議な伝言ゲームが行われてしまうかもしれない。
お料理好きの姉が住む家では──
発言には気を付けていきたいわね。
私はどちらかというと今日は魚の気分──いえ、なんでもないわ。
おなかをすかせてばっかりいると思われないようにしたいものね。