小雨

『わがやのあわてんぼう』
ちいちゃい子はよく
あわてて転ぶことがあって
怪我をしないか心配ですよね。
たぶん気になるものあると
集中力がすごくて
足元が見えなくなっていたり、
まだ体にあんまり筋肉がついていないのが
原因なんだと思います。
幼稚園のお遊戯や
小学校に入って体育の時間を重ねると
自然と運動ができるようになって
すぐこけたりはしなくなるのではないでしょうか。
という──たぶんの想像ですけど。
なにしろ来年は中学生になる小雨でも
あわててよく転ぶし──
小雨が言ってもあてにならないんです。
とにかく、みんなが大きくなるまでは
すりむいたりしたら手当てをしてあげるのは
小雨のお仕事。
救急箱を両手で運んで駆けつけたら
そろそろ慣れてもいいのに
いつも慎重にゆっくりと──
小雨の治療が始まります。
お医者さんほどでは全然ないけれど
お姉ちゃんとしてのお仕事なら
まあまあできているほうかもしれないかも──
痛そうな傷を抱えている子を前に
いくら引っ込み思案な小雨でも
遠慮しているわけにはいかないんです。
観月ちゃんが言うには、転ぶ子供は
足元をさらうおばけに好かれたに違いないと
そういうことらしいの。
だったら家族の私たちが
おばけに対抗して
転んだときに治す人になったら
バランスが取れるという感じでしょうか。
でも、人間ではおばけにかなわないかな?
確か──悪いおばけはたいてい
元気でいつも笑顔の子には近づかないと聞きますから
多少は戦えるのではないかと思います。
と、そんな話をしていたら
ああっ!
使い切ってしまったばんそうこう
もうない!
しかも、うっかり使いすぎた消毒薬も
もはやあとほんのちょっぴりしかない!
さらにあんまり関係ないかもしれないけれど
みんなの大好きなさるかに合戦のふりかけも
もうすっからかんの空っぽ!
これもなにかの
おばけのしわざだったりするのでしょうか?
小雨は明るくて元気な声であいさつするのも苦手だし
すぐ泣いてしまうからおばけがすぐやってくるのでしょう。
やがていつかは笑顔いっぱいのひまわり小雨になれるのか
それともおばけ退治の得意なてきぱき小雨になるのが先か
わからないけど──
いつかそうなれたらと、あきらめないで努力をします。
子供たちが大きくなってしまうほうが先かもしれないですね。