『やまあるき』
今日は風が冷たい日だったな。
こういう日は山から風が吹いていることが多い。
おそらくあの山のほうに──
そういえば子供たちは
そろそろ雪が降ってもいい時期なのに
どうしてこんなにお天気が続いているのか
疑問を持っているようだ。
このままでは雪だるま一つも作れずに
冬が終わってしまうと
落ち着かない感じだ。
私が知っている話だと
あまり雪が降ってくれないかと頼んで
お姉ちゃんたちを困らせるのはよくないのだ──
私のかわいい弟やいつも飛び跳ねる妹たちのように
明るくて元気な女の子が一人
山の近くに住んでいて──
ある年、なぜか雪が降らないのを不思議に思って
冷たい風が吹いて来る山へと様子を見に行った。
そうしたら山小屋で寝込んでいたのは
昔から山に住む雪だるまで──
今年の寒さでついに風邪を引き
仲間を呼ぶこともできないと困っていたのだ。
なにしろ雪だるまだから
うがいも手洗いも簡単なことではないからな。
私たちも予防を忘れないようにしたいものだ──
それで優しい女の子は
着替えさせてあげて、水枕も取替え
スポーツドリンクも枕元に置いて
熱が下がるまで看病をしたのはいいのだが──
雪だるまではどうしても
おかゆを食べることはできないだろう。
おいしいおかゆや体が温まるうどんで栄養をとれないと
食べ物の好き嫌いが激しい子供のように
風邪の直りが遅くなるから──
考えた末に結局
雪だるまに土を埋めて
溶けない部分を増やしたため
その年の雪だるまは土が混じった仲間が多く
溶け残っても土が残って
山が少し大きくなって動物の住処が増えた。
翌年からは土を食べなくても全部は溶けない
体の大きい雪だるまが住み着いたり
住処を見つけた山に不思議なものが住み着いているのを見かけることが
多くなったということだ。
なに、蛍が呼んでいる?
なぜか今日の晩ごはんのリクエストは
おかゆかうどんが多いと──
それはたぶんみんな風邪を引いたというわけでもないので
大丈夫だと思う。
鍋をいくつか用意して、しめのうどんかおじやを
両方作ってみるのもいいだろう。
それから、なんだって?
なぜか不思議なことに今日は
子供たちが雪が降ってほしいと困らせてくることが
やけに増えてきたと──
それはとても不思議な話だな。
私には原因などちっともまったく心当たりもないが
タヌキかキツネかトラリベッタリでもやってきて
子供たちに化けているかもしれない。
注意して正体を探り出すために──
では、もうちょっとみんなと遊んでみることにしよう。
山から冷たい風が吹く季節は
何かと大変な出来事が多いな。