海晴

『スタートの合図』
昨日はお疲れ様。
みごとにりんごのお買い物に成功した
買出し大臣と護衛の騎士とお姫様の活躍により
私のにぎやかな家族たちは今日もりんごを食べられる。
一緒に買い込んだ肉じゃがの材料も
そろそろいい匂いがしてくる頃ね。
私も安全運転で
少しは貢献できたし!
帰ってきたときにタオルと上着とマフラー、
暖かそうなものを全部かけてもらえるのも
大臣じゃなくても運転ができるお姉ちゃんの役得。
寒い日の買出しは
気をつけることがたくさんあるけど──
いっぱいいいことがあるのね。
夕凪ちゃんが凛々しくお買い物に向かっていく姿も見れたし。
お店の人と相談をして
自分の目で色艶を確かめて
おまけでくれるっていうお菓子も断って
家族がたくさん食べられるように
両手いっぱいにりんごを持てるかぎり持って
ポイントカードのスタンプも忘れずにもらってきた
立派な夕凪ちゃん。
かっこいいお兄ちゃんと優しいお姉ちゃんが
隣についていてあげていたのは確かだけど
マホウ使いの見習いたちの
誰にでもできることじゃない!
すばらしい!
あののんきな夕凪ちゃんは
誰にも文句を言わせない立派な買出しができたの。
春風ちゃんと蛍ちゃんの目は確かだったのね。
どんな心配の声だって
あの堂々とした態度を見れば吹き飛んでいく。
もう夕凪ちゃんは大丈夫。
嫌いなにんじんだって残さずに食べられるわ。
……やっぱり、断言するのはまだにしておこうかな?
ママにもちゃーんと伝えてあげたら
そうしたら
映画化決定!
って冗談を言って
あわてて取り出した
カチンコを鳴らす練習をしていたの。
ママの冗談はいつも大げさね!
冗談なのよね?
もしかしたら
人知れず私が任命されている秘密大臣の
永久イノシシ年、ママを止める大臣の出番が次にやって来るとしたら
その時に助けを求める人はやっぱり──
そう考えるとみんなが頼りにしている我が家のお助け大臣は
世界にたった一人しかいない大事な役職──なのかもしれない。
今日はみんなが待っていると思う
お皿のりんごを一緒に食べたい大臣と
肉じゃがの味見大臣。
他の誰より
まずキミのところに助けを求める声が届くはず。
私のことは大丈夫だから──
仮に大丈夫じゃなくて夕凪ちゃんザ・ムービーの撮影が始まっても
責任は取れないけど
その時はその時でみんなを説得する覚悟をしておくね。
さあ!
ひっぱりだこの弟クンを
私だけで独占するのが
月がきれいで静かな夜になっても──私はかまわないわ。