『巡る』
今年の冬も
私たちの家は──
どこもかしこも
見渡す限りが
みかんでいっぱい。
こたつの上に、
キッチンのテーブルに、
戸棚のいつもの
おやつがある場所に。
本を読みながら、
話をしながら、
みんなと遊びながら食べられるように
それぞれがみかんの籠を
すぐそばに用意しているみたい。
私の分は──
さくらが新聞紙で折ってくれた
折り紙の箱だけど
底が抜けないように気を付ければ
何も問題なく
みかんを好きなだけ食べられるというわけだ。
そのとなりには
教えられて私が作った分の
みかんの皮を入れる箱。
まあ、
これくらいはね!
おいしくて
無心になってみかんを食べている瞬間を
後から思うと、
あれは果たしてみかんのことだけを考えていたのか?
それともみかんのおいしさによって
心が解放されて
自分の一番大事なところへと
自然にたどり着いていたのか?
考え事の答えが
いつのまにか出ているような
不思議な感じもあるんだ。
クリスマスの準備で
なぜかたくさん着替えさせられること、
寒くて
逃げ回っていたこと、
みかんのそばに落ち着いたこと。
みかんがある場所に
みんなが集まってくること。
結局、私は
この家の忙しさや慌ただしさから
逃げ出したいとは思わないんだから
寒くてもなぜか薄着になっても
そこに帰っていくんだろうと
知らないうちに結論にたどりついていたと
それだけだ。
みかんはまだまだあまっている。
オマエも食べるだろう?
ついつい夢中になって食べるくらいの子が
もう少しいないと──
この冬の間にミカンは片付かないかもしれないぞ。
大変だ。