海晴

『寒くなると』
長い廊下の奥の
押入れの前の薄暗いあたりには
今日も女の子たちがぎゅうぎゅう。
渋滞しながらお目当てのものを探している。
春以来ずっと見ないまま
忘れそうになっていた
暖かな掛布団、
お気に入りの色合いの上着
厚い生地の靴下。
あんなにお世話になったのに
会えなくなってからしばらくぶりで
元気にしていたよって報告もまだしないうちから
慌てて引っ張り出し袖を通して
人心地をついてから初めて
穴がないか、ほつれていないか
小さくきつくつんつるてんになっていないか確かめる
いつもの肌寒くなってきた冬の恒例行事。
キミはもう必要なものは見つけた?
にぎやかな声に遠慮していると
かわいい服を探してぎらぎらするパワーのぶつかり合いに
いつまで経っても近づけないよ!
冬支度を運び出し
必要なら裁縫道具を取り出して
北風の吹く季節を乗り切るための活躍がはじまる
今日このごろ。
次のお出かけまでに足りないものを確認しておかないといけないのもあるのよね。
まだ耳あてのついた毛糸の帽子は早いかな、
フードをかぶって雪ん子みたいな姿に変わるのは
いくらかわいい毎年のお気に入りファッションとのお付き合いだからって
そう急ぐこともないかも、
寒がりで
お兄ちゃんに笑われちゃうかもしれないって
わいわい声がするよ。
次の季節に向けて
好きなおしゃれを思い出し、
小さくなった服と格闘したり
お下がりの行き先を追いかけながら
寒くなるからこそ、
新しい出会いを重ねていきます。
キミはどんな出会いがありそう?
この冬もみんなのかっこいいお兄ちゃんでいられそうだよ!