『知らないうちに』
毎日時間に追われるように
したいことばかりがいっぱい。
みんなと遊んで、家事もして
お買い物ではめざとくお値打ち価格を見つけ
もちろん学校のお勉強もしっかりと。
そうしていつも通りの日々を過ごしていると
知らず知らずにどうしても
決められたようにおなじみの場所へ向かうだけになって
新しい世界が広がるチャンスを見逃している気がしてしまうの。
だから自分でも思いつかないことを
誰かが決めてくれて
連れ出してくれる機会がなかったら
なんと自分でもそう思っていないのに
家と学校の往復を繰り返す日常に加えて
週末までがよく見た風景を通り過ぎていくばかり、
お兄ちゃんに聞いてほしくなる
胸躍る発見が
わずかに食事の席でみんなよりも少なくなると
感じることがたまにあるの。
退屈とは縁がないにぎやかで充実した毎日を送り
幸せな日常に日々感謝の中学三年生ですけど
忙しいのも時には考え物といったところがありますね!
ということで誰が言ったか
まるで蛍を誘うように
次の週末はお出かけです。
そうだった!
忘れていた!
週末には
お買い物ができるの。
台風のあとが残る街並みはそう離れていない場所にあるけれど
川のそばや地盤の緩い場所に気を付けながら
私たちは時間をかけて
いつもと違う行き先へ足を伸ばすことができます。
思えばあわただしく過ごすうち
月末のハロウィンの準備も途中だったんだぁ。
大変! 楽しみな出来事なのに!
いっぱいみんなで楽しくなれるはずなのに
蛍がうっかりしていたらいけないな。
お兄ちゃんだって
ごちそうには期待してくれるよね?
そうなると衣装だって気合を入れたいところだもんね。
お出かけの前の準備は
先に春風ちゃんが予約してしまったと聞いたけど
お買い物の途中まで
誰かがお兄ちゃんを独り占めする約束なんて
まだ聞いていないもの。
少しだけ蛍に付き合うお時間をもらってもかまわないですか?
お兄ちゃんに一番似合う色を選びたいの。
ほかの誰でもない
蛍にならできると
お出かけ前にうきうきしながら勝手にその時を思うのも
なかなか行かないお楽しみに向かう前のときめきのひとつ。
そんな夢を見る経験を
どうか蛍にくださいね。