『駆け出して』
ぴゅんぴゅーん!
夕凪が走ると
どこまでも行けるよ。
ほこりが立つって
おこられても
ばたばたうるさいって
おこられても
あぶないぞって
おこられても
走り出したい気持ちの
夕凪を止めることはできない。
秋が来て
運動にいい季節になり
体を動かし足りない気がしたら
動きたくなるのは当たり前のことだもの。
本を読んでいる星花ちゃんの手を握り
泣いているさくらちゃんを抱えてさらったら
競走をはじめる立夏ちゃんと並んで
負けないように
足の裏に力をこめて
肩が抜けるまで腕を振って
夕凪はどこへ行くのだろう。
だって走った先に
お兄ちゃんがいるかもしれないからね。
夕凪のお兄ちゃんは世界でただ一人。
お兄ちゃんの妹の夕凪も
世界で一人だけ。
だったら待っているかもしれないじゃない!
会いに行かなくちゃ!
ぴゅぴゅんぴゅーん!
夕凪の足音が鳴ると
景色は変わる。
走れ、動きやすい秋を迎えた子供。
さわやかな季節のあいだをずっと
せいいっぱいに走りぬけ!