『ただの一日分』
汚れてもいい
動きやすい服に着替えたら、
頭にほこりをかぶらないように
三角巾をつけて──
口や鼻から誇りを吸い込まないように
三角巾をもうひとつつけて──
掃除の準備は完了。
ほうきにはたき、
雑巾や掃除機や
フローリング用に窓拭き用に洗剤も
庭では竹ぼうきだってあるけど
ほこりと枯葉を掃き出す目的だから
だいたいほうきを頼りにすることになるわね。
少し冷たい風が吹き
空気の乾燥しがちな中で遊んだ子供たちが
夕暮れの赤さに追い立てられるように
大きな声で急いで家に戻ってくると
どうしても掃除の仕事は
晩御飯の支度であまり戦力にならない
小学生たちが中心でやっていかないといけないことになるの。
おうちのことだし
大事な仕事だから、
文句を言うほどでもないけれど
次から次へと駆け抜けていく
大騒ぎの足音が
絶え間なく用事を増やして
すっきりきれいになるのは
時計の針が無慈悲に進む
まだ先のことだと──
告げているわ。
そして、よく働いて
おなかを空かせた子供たちと
秋の陽気に香るまぶしい収穫の力によって
食事の席は
昨日よりも今日、おそらく今日よりも明日に向かってさらに
にぎやかになり
その結果、洗い物が増えていく当然の帰結となる。
おチビたちに仕事を任せて
短い休息の時間をとるには
ほこりの散らばる掃除、
危なっかしい手つきの皿洗いを見るに
まだまだ気の長い教育が必要だから
とりあえずやることを済ませるために走り抜ける。
そう──
まあ、大家族だからという多少のあきらめと共に。
あなたもそろそろ
あきらめた?
赤ちゃんの頃からお手伝いを宿命付けられたみんなとは
一緒に戦力に出来ないところはあるけれど
日々の労働も
そろそろ様になってきた感じね。