氷柱

『雨の夜』
ただいま。
ざーっと降ってまた止んで
だんだん雨が降る間隔が長くなってきたわね。
友達とはしゃいで
盛り上がってきたところだったけど
家の人が迎えに来たなら
そうなったらもちろん
もう──
帰らないわけには行かないわ。
傘をさした手と逆の手に
大事そうに抱えた女物の傘。
それで、パーティーはお開きよ。
先週は友達の誕生日があったの。
それでせっかくだから集まって
お祝いの歌とケーキは
中学生の誕生日はいくらあってもかまわないのよ。
雨のせいで
ところどころの細かい進行に
巻きが入ったお誕生日パーティーになったけど。
来週は町の運動会と──その練習に付き合わされて
忙しくなってしまうものね。
急な雨でもなかなか日をずらせないことってあるのね。
まったく中学生のうちからこんなに予定が続いて
休む暇もないって
大人になったらどうなってしまうのかしら?
それこそ分刻みのスケジュールになって
今日の不完全燃焼も懐かしく思うときがくるのかもね?
あんまり先の予定なんて細かいことは考えずに
何もかも終末と滅びのせいにして好きなことが出来たら
いいのかもしれないけれど
ちょっとそういうわけにはいかないものね!
飛んでいきそうなものが庭に忘れられていないか
強い風が吹いたとき危なそうな窓はどこかにないか
停電になっても問題なく早く宿題を終わらせられるか
私がお尻を叩いて確認させないと
いつまでも寝転がって漫画を読んで休日を過ごす人が多すぎる気がするわ。
家の用事が済んだら
あとは海晴姉様が無事に帰ってくるのを祈るだけ。
予報が大げさだったと笑い飛ばせるくらいで
お疲れの海晴姉様が少し気の毒になるような朝を
待っていられるように──
できることはしておかないとって
そう思っているだけよ。