観月

『よくよくめでたく舞うものは』
降り止まぬ雨の大粒が
頭の上で傘を叩き
やがて奏でる音を聞いて
子供たちが歌を作る。
さんさんぎらぎらの暑いお天気も
たまには一休み。
今日ばかりは急いでおうちに戻らねばならぬ。
小楢葉、やちくま、蝶に小鳥を追いかける時間もお預けじゃ。
放っておいても見えなくなるほど遠くまで駆けて
勝手にくたびれて眠るような顔が
見られなくとも、
踊って転んで花の園はどこでもそうする通り。
すっかりあたりを散らかして
いつの間にか兄じゃのおひざで
みんなは体を預け合う。
山のほうで華やかに人を誘う
桜人の調べの頃が
騒がしいうちに
もう過ぎていって──
波の音と島巡りの記憶が
ふとよぎる季節。
雨がやがてあがる
今は遠い暦の先には
常に恋するたなばたよばひぼし──
結ばれる夢を見る山鳥を見るのだろう。
海晴姉じゃのお天気予報で
梅雨を楽しむお便りを求めたので
みんなが手紙を書き始めたが
蓬莱山を戴く亀の歩みで
こっそり海晴姉じゃを驚かせる計画はままならぬようじゃ。
今日までずいぶん
夏を待つおしゃれの工夫をしてきたのだから
わらわも──
それでいいと思うのだけど。
傘をさしても長靴でも
弾む足を止めぬ子たちが
薄い衣でどうなるかは
想像するのもたやすいことじゃ。
ずっと明るくまぶしい季節に
またみんなの声が
遠い青空まで響くほどはしゃぎ出すと
雨のしとしと冷たい日にも
すでに見えているようで
まったくおそろしいことじゃな。