氷柱

『スタート』
長い連休も始まったばかり。
一日くらい熱を出して寝込んだって
これから楽しいことはいくらでもある!
……
ユキが休日だけでもみんなの役に立ちたいと
張り切りすぎて
少し疲れてしまったみたい。
別にそんなに一生懸命お手伝いをしなくたって
ユキがいてくれるだけでどんなにうれしいか
伝えきれないくらいだっていうのにね。
私は──
伝えるのがまだまだ下手なのかしら。
それとも、私の気持ちなんて
わかってくれていても
でもやっぱり
みんなのために何かがしたいって思うものなのかな。
私の家族は
何があったとしたって
小さな妹を見捨てるほど
薄情じゃないのにね。
私くらい大きくなった妹は
もう放っておかれてもぜんぜんかまわないのに
そういう時に限って嫌というほど世話を焼く人ばっかりだし
熱を出して
眠っている子供のことを
みんなはずっと待っているの。
ちょっと落ち込んだ顔を見せたけど
ユキは大丈夫よ。
なにしろ私がずっとついているもの。
眠っていても起きていても
ほんの少し高くなってしまっただけの熱が下がるまで
ベッドの隣で
いつでも笑顔で元気付けてあげられるように。
もういいって言われても離れずにおせっかいをしなくっちゃ。
まったく私の中にも
少しくらい嫌がられてもぜんぜん気にしない鈍感な血が流れているみたい──
なんてことかしら!
もし時間があったら
たまにでいいからユキの部屋に会いに来てあげたらいいわ。
相手はデリケートな女の子だからって
あんまり気を使い過ぎないでいいのよ。
もし下僕のデリカシーが足りないようなときには
いつも私が叱ってわからせてあげるから。
少し──
運動もしたい気分だから
あなたはやらかすくらいでちょうどいいと思いなさい。
ぺしぺし頭をはたく程度では
この腕がへこたれないように
今のうちからフォームの練習と
お小言の言葉を用意して待っているわ。
こら下僕!
だめよ!
うーん、うまく反省させるには
これだとちょっと刺激が足りない気がする。
いざ準備するとなると
叱るのも難しいものね。
みんな元気で揃ったら
いつものもっと簡単なことだって
その時にはちゃんと思い出せるのにね。