観月

『戴冠』
夜にまぎれて
踊るものたちの
陽気な歌がまた聞こえる──
その声はいつの時代も変わらず
耳を澄ませばどこからでも
鳴っているものだが──
人が浮かれているか
あわただしい様子だと
生来のいたずら好きがむくむく湧いて
なんだかいつもよりもおもしろそうにしているな。
やつらがあまりはめをはずすと
いけないと思って
集まりに顔を出してみる機会が
このごろ増えている。
いつでも影に潜んで踊るものは
世の中をさかさまにした鏡像そのもので
もしや蛍姉じゃが
パン屋さんで出会った
不穏な言動の商店街の人たちは
本当にその姿のとおりであったのか?
俗世の話題を求めて
狐狸が山から下りてきたのでないと
誰が言えようか。
なにしろ改元も間近に迫っているし
お祭り騒ぎをしたいのはうちの家族ばかりではなく──
うろの暗がりの
今日の集会を除いてみたところでは
どんな太鼓の節と
どんなお店で
人を迷い込ませるか
議論は過熱する一方じゃ。
ふふ──お祝いごとの隙を突くものは
どこにでも必ずいるからな。
兄じゃも木の葉のお金をつかまされる前に
お山のほうには注意すると良いぞ。
百家争鳴の話し合いは
誰かがうまくまとめてくれなければ
さっぱりすすまない。
兄じゃに自信があるならば
小さきものどもが悪いことをしないよう目を光らせるついでに
葉擦れの奥のお祭り騒ぎに
一枚噛んで
いたずらをはじめることも──
できるであろう。
どこも最近は騒がしいのでな。
わらわも踊り出しそうに
うきうきしているのじゃ。