綿雪

『春はこれから』
しばらく続いた凍える寒さで
桜の小さな花びらの上にも
雪が積もるところもあったそうなの。
それでも海晴お姉ちゃんの
久しぶりの楽しそうな踊りと一緒に
暖かな日が戻ってくる予報がとうとう
私たちの町に届きました。
残りあとわずかな春休みを
少しのあいだだけでも寒さの心配から離れて
楽しく過ごせたらいいですね。
ユキのお姉ちゃんたちは
山のほうから強い風に乗ってくる
怖ろしい寒さにもちっとも負けず
明るく過ごしています。
一人だけ寂しく窓の外を眺めて
花をつけたばかりの細い枝が揺れているのを
ふるえながら見ているばかりでは
いけないの!
みんなが得意なのは
楽しいことを見つけるわざ。
ユキももうちょっと
お姉ちゃんたちの前向きさに学んで
力をつけなくては!
そう考えていると
思い出したことがあるの。
あの、春は物事を始めるのに向いた
のどかで過ごしやすい季節だから
習い事に通うのにもちょうどいいって
ときどきみんなは
ママと相談しているでしょう?
お習字にそろばん、
ピアノや合唱団。
柔道も野球でも
やりたいことを
なんでもはじめられるの。
できないことは何もないような気持ちが
まぶしく心の中にふくらみはじめるのは
つぼみが開く数を日に日に増やすから。
気がつけば、あんなに揺れて
見ているとおそろしかった木のどこを見ても
ついに花びらはふるえながら開いています。
ユキもあんなに強くなれるかな?
お兄ちゃんと相談しながら
習い事のお話をしたいな!