観月

『ころころ転がし』
昨日は雨で
今日はよく晴れて──
くるくる変わるお天気は
春が近づいているしるし。
それがうれしいことであり
大粒の雨もとつぜんの雷も暖かさが連れてくるのだと
わかっていてもなお
子供たちは良く晴れたときに
お庭に出て遊ぶのが
やっぱりいちばん大好きなのじゃ。
なにしろ雨では
せっかく見つけたこのとてもよい形の小石を
ころころ競争させて遊ぶこともできぬ。
砂の上を蹴って速さを競い
坂道を転がして一等賞でゴールを目指す。
ぬかるんでしめった道も
それはそれでお楽しみはあるとしても
できないことも多いのでな。
小石に負けずに
靴の裏がまったいらになるまで駆け回る
こんな日もなくては
やっぱり楽しく陽気な春が来たとは言えぬのじゃ。
それに、ただ小石を転がすだけの
他愛のない遊びに見えるかも知れぬが
ちょっと踏み込んで研究を始めてみると
知ることがいっぱいある。
みんなと競う戦い、
それは常に裸の自分と向き合うことに他ならず──
良い石を選ぶことに始まる、
まずここから己の心を見つめる時がくる──
丸さに惚れ込むか
どっしりした見た目から判断するか
あるいは滑りが良さそうな平らの部分に引きつけられるのか、
そうしてついに理想の相棒を見つけ出しても
転がす道の具合や
得意な蹴り方を探り出し
何よりもやることをやったら最後は運任せの
あの興奮と言ったら
子供のどのような遊びも
真剣に挑めばそれは必ず人生の何たるかを教えるものと気付く──
遊んでも遊んでも学びつくせない子供の休日がある。
兄じゃも子供っぽいような気がしても
わらわのおすすめだと思って
ぜひ本気で石ころを転がしてみるとよい。
つまさきから伝わる固いかけらと踏みしめる大地の感覚が
体中に伝わって──やがて兄じゃも
夢中になるであろう。
負けたら悔しいと思ったときが
勝利の喜びの近づく瞬間なのじゃ。
きっと誰もが気がつく時が来る──
求めていた答えはすぐ足元に転がっているのだと。
言っても伝わらず仕方がないなら
こんなよいことには
手をつないで兄じゃを仲間に引き入れるのみじゃ。