星花

『レッスンワン』
ぽつぽつしとしと
冷たい雨がやまなくて
まっすぐ家に帰るだけの日は──
校庭の遊具も雨だれで濡れたまま
近くを歩くときも注意。
体育館の入り口には
クラブ活動のお兄さんやお姉さんが
はきかえたくつ。
今日は運動のクラブがみんな
筋トレになりそうと私たちのクラスでもうわさなの。
大変ですね──
ひとごとみたいにそう言う
まだクラブ活動が本格的じゃない子だって
はしゃいで帰る道は
滑らないように注意なの。
なにしろ水たまりを見かけたら
どれだけ大きいか気になって
近寄ってしまう子はたくさんいる。
いつもより帰り道の足元に注意、
だいじなことが増える雨の日。
でも、寄り道をしないから
道の悪さにかなり気をつけても
家に着くのは思ったよりすぐのこと。
逃げ込んだ暖かいおうちで
庭も雨だれがしとしと──
お部屋の中から眺めるばかり。
そうなると宿題に早めに手をつけるでしょう。
いつもよりも早い時間に
やることをすませてしまって
すっきりした気持ちと
拍子抜けした感じが
どうしても──
雨の日のぼんやりとした気分。
でも、することは何もないかといえば
まだこれから宿題を広げる子たちを手招きして
わからないところがあったら教えてあげる準備で
そばにいるのは──
雨の日でどこにも行けないときは引き受けるお仕事。
星花もお姉ちゃんたちのお勉強を見てもらったのだから
こうしてできることをするのだって
いいと思います。
お兄ちゃん、知ってる?
一年生でも小さくても宿題のために机に向かう子は
いつも真剣な顔をして
教科書の新しいページの
まだ見ぬ挑戦へと真正面から向き合っている。
怖いくらいに──
見とれるくらいに
やがてこういう真剣さで
ちょっとお姉さんだった星花たちのところへ
すぐ追いつかれてしまうのでしょうね。
ユキちゃんも吹雪ちゃんも夕凪ちゃんも
それぞれが使い込んだ教科書の残りページはあとわずか。
折れ曲がったり落書きされたり
きらきらの新品じゃなくなった教科書たちは
ずっとこんな真剣な顔で続けてきた努力を
他の誰よりもそばで見つめて知っているのでしょうね。
なんだかうらやましいですね。
たまの雨の日だけは──
同じ教科書と友達だったお姉ちゃんにも
開いたページで待っている
新しい出会いのお手伝いをさせてください。