『カードのお告げ』
トランプの一組の山から
カードが一枚
どこかへ行ってしまったみたい。
バラの色を塗りに行ったのでしょうか。
でも、お庭の花壇は
今は美しく着飾る華やかな季節はお休み。
霜をまとった緑色の葉っぱがおいしいだけです。
トランプって一枚なくなっただけで
ババ抜きも神経衰弱も決着がつかないし
七並べやダウトの難易度が上がってしまう。
海晴お姉ちゃんたちはむりやりゲームをしていたけど
楽しそうでもありやけになっていたようでもあり──
しかもなくなってしまったカードが
よりによってハートのエースなのですから
これでは恋占いもできないの。
いい結果が出ないと決まっている占いがこの世界にあったら
誰も最初からしないですよね。
予備の白いカードももうないし
新しく作ったら裏側が違うからすぐにわかってしまう。
あんなにみんなでわいわい楽しめるのに
たったひとつの弱点が
ここにきて明らかになってしまった
きれいなトランプ。
新しいのを買ってくるのは
メモしておいて忘れないようにして
一枚だけないトランプの束は
どうしたらいいんだろう?
捨てるのはもったいないと
物知りの女の子やひらめきに自信がある子が
輪になってかわいいトランプを囲み
腕を組んで考え込んでいる。
裏側を見て一目でわかりやすいハートのエースがあったら
恋占いでいい結果が出て
すぐに願いが叶うというのならいいんだけど
ちょっとそう言ってみたら
恋は自分の手でつかむもの!
って、氷柱ちゃんががんばるから
春風もあんまりずるはできない──
たぶん春風は道を歩いていてキューピッドの矢が落ちていたら
後ろめたい気持ちがありつつも王子様にちくりとしてしまうと思います。
氷柱ちゃんには言えなかった秘密を明かすと
王子様は私を叱ってくれるかしら?
トランプは立夏ちゃんみたいな小さな妹たちが
手品の練習に使うと持っていきました。
とてもうまく手品ができるようになったら
いつも占いでいい結果が出て
みんなの願いはすぐ叶うようになるのでしょうね。
春風は陰から手品の練習を応援しています!
自分の願いをかなえるにはどうしたらいいのか
ぜんぜんわからないことなんて忘れてしまえばいいの。