観月

『休憩中じゃ』
もう食べられないのじゃ……
むにゃむにゃ。
はっ!?
これは兄じゃ、
今日になって二度目のおはようになるの。
冬休みに入り
12月のお楽しみも
ひとつ大きなものが終わって
あとは大晦日のおそばと紅白歌合戦を待つくらいのもの。
宿題もして、
大掃除もして、
あまり意味なく踊ったりもしながら
さわやかに気持ちの良い新年を迎えるための日々が続いておる。
寒くとも、大切な日のために
みなががんばっているぞ。
ちょっと右を見れば
窓を拭いている子がいるし
その前を廊下の雑巾がけをしながら
横切る子がいる。
左を見れば
お風呂を洗っている子もいる。
新聞を読みふけって
お掃除が進まない子も
お皿洗いの合間に
みんなの分の温かい飲み物を運ぼうと
キッチンで大きなお盆を構えている子もいる。
うむ、休憩は大事なこと。
あったまってから
また、雑巾を持って大仕事のはじまり。
というわけでこたつで和んでいたら
ついつい眠ってしまったというわけ。
これからお掃除の遅れを取り戻しに
はりきっていく……
あれっ!?
こたつの中に──
せんたくものが!?
これはもしかすると
わらわが眠っている間に
おうちに遊びに来た雪だるまが
かわいい巫女が起きるのを待って──
となりにあたったので
溶けてしまったと思うぞ。
悪いことをしたのう。
わらわがはたらきもので
くたびれていたばっかりに。
さぼってなど
いなかったばっかりにな。
いやいや、ほんとうじゃ。
誰かがやってきて
おふとんでがっつりお昼寝をするために
起きた後の着替えが寒くないように放り込んでおいたのを
黙っていてほしいから
たっぷりおかしをくれたなどと
そんなことはなーんにもなかったぞ。
おや、こたつの上におかしがひとつあるぞ。
わらわはなぜかおなかがいっぱいなのでな、
兄じゃがもらっておくとよいであろう。
お掃除の合間に
ゆっくりしていくといい。
なーに、どうせこたつから出る時は来る。
焦ることはない。
なにしろ、
お手伝いに駆け回りながら
普段はみんなのものになってしまう兄じゃを
どこかでつかまえて
お話をするのが──
忙しい日々にとつぜん訪れる
休憩時間ならではの喜びなのじゃ。
いい感じのこたつが呼び寄せているみたいに
わらわがとつぜんお休みをしたくなったのは
ここで会えるという予感が降りてきたからなのかもしれぬ──
ううん、お掃除をがんばってお疲れなのが理由じゃ。
兄じゃも、もう少し休んでゆくようにな。