小雨

『まねき』
ごめんなさい
春風お姉ちゃんではないんです……
小雨です。
なぜかというと
春風お姉ちゃんが
すごいからで──
これだけじゃわからないですよね。
説明が下手ですみません。
小雨がみんなのおやつを作って
落とさないように気をつけて運び、
食べたら一緒に遊ぼうねと誘ったのが
ついさっきのできごと。
その後たちまち
嵐の海で大渦に出会ったみたいに
状況は二転三転、
小雨は翻弄されるばかりで
気がついたら春風お姉ちゃんの代わりに
日記を書いています。
なんとか落とさないでおやつを届けられたんだけど
みんなあんまり
小雨のカップケーキは飽きてしまったみたい……
そこに春風お姉ちゃんが助けに来てくれたんです。
カップケーキはおいしいよって食べてくれて
みんなにすすめてくれて、
泣きべそ小雨の涙を拭いていったの。
みんなは春風お姉ちゃんと遊びたくて
おやつを食べたら飛び出していきました。
お皿に一つも残さず
食べてくれるとうれしくて
後片付けや洗い物もはかどります。
このあと、春風お姉ちゃんはみんなと遊んであげて
お風呂にも一緒に入るそうなので
今日は信頼できる小雨ちゃんに預けますと──
責任重大な役目を任せてもらえることになりました!
明日、春風お姉ちゃんにバトンを渡せるように、
お兄ちゃんが日記を読まなくてももういいやとならないように
がんばってみます。
あの──
気になるのはやっぱり
春風お姉ちゃんが思いついたという
おこづかい作戦ですよね。
みんなにクリスマスの準備のお手伝いや
次々と押し寄せる忙しい年末とさらに大掃除、
それから年が明けてからのこまごまある用事などを
やる気まんまんで約束させ、
なおかつおこづかいを無駄遣いする人がひとりもなく
先を争って銀行へ貯金に走っていくようにする
魔術のような作戦とは
いったい何なのでしょうか。
小雨ちゃんはみんなの先頭に立って銀行へ案内してあげてね、
遅れたらおいていかれちゃうよ、
と応援してくれましたが……
いったいどんな方法なのかわからないの。
お兄ちゃんもこんな話ではがっかりしてしまうかも……
でも、春風お姉ちゃんが言うなら確かだと思うんです。
実は奇跡でも魔力でもなく
種も仕掛けもある手品なんだと
銀行のパンフレットを渡してくれました。
この中に答えが書いてあるそうなんだけど
……
あれ……?
もしかして
これがそうなのかな?
でも小さい子たちには
細かい説明の漢字は読めないですね。
あっ、だから小雨がみんなの先頭に立って
ちゃんと先着順に間に合うようにというお話だったのかもしれません。
そのためにみんなを間違いなく目的地まで案内して──
ど、どうしよう!?
緊張しすぎたら道に迷ってしまわないかなあ。
お兄ちゃん、どうしよう!
小雨はまだまだ責任重大なお仕事が続くみたいです──