星花

『ある日の』
窓の外からきれいな声が
高く長く
私たちの部屋に届いてくるの。
そうするといつも必ず
かわいくて
楽しくなっちゃって
鳥が枝にとまるふりをしながら
みんなのところに近づいて
よく似た声を出す子が
ひとりふたり。
はじまったら
どんどん増えて
三人も、もしかしたらもっと。
最初のきっかけの
みんなを驚かせた鳥の声は
どこでおぼえて
どんなふうに上手になったのか
私たちの誰も知らない。
だけど、
どうやったらいいのかとか
できるようになるのかどうかも
ひとつも考えないままで、
楽しそうで
やってみたいと思っただけで
どんなにだめだと言われても
子供たちはぜったいに
大張り切りの胸のどきどきを
止めることはないのです。
こんな冬の日の
寒さを伝える窓にどうして
不意にみんなをとりこにする声が
舞い降りてくるのでしょう?
どんな鳥かはわかりません。
明日も同じ声を聞かせてくれるのかも
予定を教えてくれることは全然ない。
でも、なんか
いいかも!
いいな!
私たちの部屋はそれだけで満たされているみたいに
先のことは考えず
上手じゃなくても
はじまる。
やがていつか
笑い合ってにぎやかすぎて
お姉ちゃんたちに見つかって
こらーって追いかけられ
簡単に首根っこをつかまれて
かるがるもちあげられて
それよりお風呂に入りなさい、
宿題するなら見てあげるから持ってくるべしと
優しい声がするまでの
短いような、けっこういろいろやっているような時間。
またなにかのきっかけで
きれいで楽しそうな声を思い出したときに
大笑いをして転げまわった騒ぎは
もとの鳥の声が聞こえた寒い冬を忘れても
また面白そうにはじまるのでしょうか。
さっきはテレビのダンスや
その最後の
手の甲にキスを
きゃあきゃあ言って見ていたので
星花の予想では
また似たような騒ぎが繰り返されるかもしれません。
楽しくって
笑ってばっかりで
また、明日も
その次のいつかでもなんて
思ってしまうような。
ありえないとは言い切れません!
星花のつたない予想は
果たして当たるのか
今はまだ確かだとは自分でも言えない、なんとなくだけの気持ち。