『エプロン』
人間には二つの種類があって
すなわち!
かわいいエプロンが似合う人間と似合わない人間よ!
そもそもこういう二種類に分ける話のときって
言われてみればなるほどあるあるとうなずく
絶妙なラインの話題になるのが普通でしょう。
朝食のパン派とごはん派とか
バス派か電車派か
記念日には外食かそれとも手作りにこだわるか──
などなど。
ああ、勘違いしないで。
これは対立構造の話題ではないから
バスに乗るくらいなら電車を利用すればとか
今はそういうことではないの。
確かに電車がこれだけ便利になっている以上
たいていの場合は
利用者側の知恵と工夫でバスより使いやすくなると
教えてあげたい──
でもとりあえず
その話は後にしておくわ。
何の話かというと
つまりエプロンが似合うかどうかという場合、
言われて初めて気がついたけれど
そういう分け方ってあるよね、
うんうん
確かに──
なんて笑っていられるような状況とは
まったく違っていて
明らかに──
もう着る前からどう見ても──
待ってよ、ちょっと、それはないでしょう、
いやいや変じゃないかしら
どうして私が手伝うときは
こういつもいつもいつも
どこからどう見ても似合うわけがない
メルヘンチックで
夢いっぱいの
甘ったるいとしか言えないデザインの
かわいらしいうさぎの形とかエプロンドレスとかそんなのばっかりに
なるのかしら!
機能的で無駄のないデザインが好みだって
どれほど繰り返しても
誰ひとり聞く耳を持たないって
そんな家族ってありうるわけ!?
まあ、仕方ないの。
蛍姉様は
おそばのほうに気が向いちゃって
ハロウィンが終わってすぐとりかかっていた
クリスマスメニュー作りは
どっかにすっとんでいってしまったみたい。
この時期ならジングルベルを
東京ドームで聞く場合だって考えられるわけでしょう。
ある時はクリスマスイベント、
ある時はファンミーティングと
何度も楽しませてもらっているにもかかわらず
映像には一度も収録されたことのない不遇の名曲が
今度こそ──!
世の中には愛されながらも人々の前に出ることが少ない歌と
愛されて華やかなステージで歓声を浴び続ける歌とがあるのよ!
クリスマスは近い、
お手紙も書いた──
寒さもいよいよ本番。
一ヶ月も前から準備をしておくごちそうって
気が早すぎるものだけど
どうも気分としてクリスマスには
手作りのケーキがないとさみしい。
うちは二つの種類で言ったらそちら側なのよ。
いざというときに
家のみんなを助けられるように
9女・麗はこの平成最後のクリスマスを迎える冬、
エプロンが似合わないなんて文句を言っている場合では──
まあ、ちょっとは言わせてもらったりしながら。
今年のクリスマスも厳しい戦いになるのはわかっている。
苛烈な日々にあまりふさわしい戦闘服ではない気がしているのは
いちいち問い直していては
できることもできなくなる。
でも──
うん。
まあともかくそういうことよ。
別に男子禁制の戦場とは言わないけれど
私には台所に立つ理由があるというだけの話にすぎないわ。