観月

『ろうそく』
針がまわって一分間。
数字が巡って同じ時間。
よくできた時計のおかげで
人の世の中はとても便利になった。
むかしはこのように
太くて重たいろうそくの
とろりとろり溶け落ちるまでを──
よく数えたものじゃ。
白いろうそくに
揺れるのは──
赤く空を求めてうねる炎、
震えて怯えるような青い炎。
きっちり決まった時間で
なくなるというものでもないが
もともと時の刻みとは
針が進むようには行かぬ。
ここ数日は暖かくて
今年の秋はのどかでよいと昼寝もしていたのに
ある日灰色の雲がかかっただけで
あわててタンスに駆け寄り
上着を探す寒さ。
難しいことを何にも知らない子供たちも
のんきに縁側で寝転がることもできぬ。
足音もなく近づく冬は
まったく恐ろしいものじゃ。
こんなに静かに
忍び寄られてしまうようでは──
寒さの染みる冬や
鈴を鳴らすクリスマス、
近づく年の瀬に
週末の東京ドームライブなどの
面白いことやにぎやかな声に混じって
小さないたずら小僧だったり
嫉妬深い雪女やら
おなかを空かした貧乏神などが
気を抜いたところへこっそりと
やってきたりしたらいけない。
ろうそくを一本拝借して
探す場所は──
かくれんぼばかりしている子供がいたら
ここに来るであろう
小さなすきまのような部屋。
わらわはこういうところを見つけるのが好きなのじゃ。
そうして、人目を避けた場所をねぐらにする
あまりよくないものがいたら
めっ!
いけませんのじゃ!
と、あるべきところへ追い返すのも──
寒さと共にいろんなものがやってくる時期の
赤い炎を灯したら
なぜか消えるまでは
山すそを染める朱色はとどまり続け
晩ごはんの時間までしっかり役目を果たすようにと教えるので
わらわもきちんと見張りができるということになる。
寒い日が続くとこのようなお仕事も
かくれんぼもおっくうになってしまうから
毎日いい日差しが出れば
わらわもそのへんで昼寝ばかりしているはず。
こっそり隠れたり
遊ぼうと出てきたりする
明日のわらわの運命は
揺れるろうそくの炎みたいに踊って
誰もどうなるかを知らぬようじゃ。