春風

『かわいいおそうじ娘』
春風は小さい頃からずっと
かわいいおそうじ屋さん。
ママのあとをついていって
ほうきを貸してもらった
あの日から──
ほうきが手を離れることはない。
春風の背丈よりも大きかったほうきが毎日
教えてくれるお仕事。
廊下の隅がよごれている、
縁側の前にほこりがたまっていると
汚れを追いかける目利きを育てながら
毎日を共にしたほうきは
出会ったとき、おそうじの先生になり
やがて同じ目標を共にする仲間となり
今ではベテランの春風の手元で
くるくる踊る友達。
ほら見て!
春風が胸を張って歩くと家の中は
術をかけられたようにきれいに変わり
子供たちの汚れた靴下が元気に足跡をつけられるよう
どこまでも明るく切り開いていく。
次にお掃除をするのを──
みんながどたどた駆け回るのを待ちながら
ほうきは今日も踊る。
ママから娘へ受け継がれた
年季の入ったほうきは
いまだに衰えることなくその腕前を見せているの。
あの無邪気な妹たちの
無垢で真っ白な笑顔にも
いつかは春風のほうきを受け取る
たくましい細腕の種子が眠っているのでしょうか。
いったいいつの日になることか──
楽しみですね。
だから春風は
初めてほうきを持ったときのように
今日も変わらず──
かわいいおそうじ娘の歌を歌いながら
家をきれいにする。
白雪姫と暮らす働き者の小人のように
愛する家族と笑顔でいたくて
どこもかしこもぴかぴかに輝かせるお仕事。
ほうきのリズムと
換気するさわやかな風に乗って
どこからか春風の歌が聞こえるとき
みんなの気持ちは明るくなる──
そんな話が語り継がれるようになるまでもうすぐです。