海晴

『ラストスパート』
ハロウィンが終わり
街を飾っていた秋色のかぼちゃたちが眠りについて
白い冬の国で準備をする楽しげな鈴の音が
私たちの町に聞こえはじめたような気がする
11月の始まり。
汗をかいて夢中で走り抜けてきた一年の
ゴールテープがうっすらと見えてきた頃、
この日を待っていたように
とうとう朝晩の寒さは厳しく変わっていく。
日が出ている間はまだ暖かくて
朝に選んだ厚着がなんだか大げさだったような気分になったりも
するんだけど
帰り道にはぜーんぜんそんなことなかった、
というか足りないくらいだった!
なんて震えながら自分の判断を恨む寒さなの。
あーあ、
もっと重ね着をしてくればよかった。
というかもっと早く帰ればよかった。
かわいいみんなもおうちで待っていてくれるんだから。
いや待てよ、そもそも最初から家を出ないでいればいいんだ。
よし!
明日くらいには家から天気予報の中継ができるように
ママに話してみよう!
というのは冗談だけど。
ともかく文句を言っていても仕方がないので
ポジティブに、
寒くなってきて良かったことを探すと
えーっと……
帰ってきて冷たくなった手を
みんなのほっぺたに当てて
おどろかすおもしろい遊びができる!
……あんまり大人として褒められた行動ではないかもしれない。
しかも小さい子がそんな遊びを覚えてしまうと
今度は油断した時に外から帰ってきた冷たい手を襟に入れられて
こっちがびっくりさせられることになるの。
訪れた逆襲の時。
意外な下克上の瞬間。
やっぱり大人は子供の教育に悪いことをしたらいけないわね!
あとは寒くなってよかった何かがあるかと考えたら
そうだなー
体を暖めてあげるために抱っこをしても
文句を言われないようになったことね。
くつろいでいる隣に座っておもむろに手をつないでも
油断したところを見計らって背中のほうからくっついても
屈み込んで小さな体を抱きしめてそのまま転がっても
なんにも問題はない!
かわいいみんなを明るい笑顔にしたくて全力の海晴としては
こんなにいいことは他にないくらい
冬はみんなの暖かさを満喫できる最高の季節かも!
でもいくら抱っこしても問題ないとは言え
それじゃあいつまでも冬が続いてもいいかといえばそれも悩むし
そもそも実は無制限に抱っこしていいかと言うと
そのうちぽっかぽかになってだいたい逃げられちゃうし……
これからは暖まった子たちとどう遊んでいくかが
いよいよやって来た長い冬を越してゆくための課題ね。
ともあれ、私には大好きな家族がたくさんいるの。
世界中の誰よりも冬を楽しく越えていける条件が揃っていることは間違いないわ。