『スナイパー』
両手にずっしりとした重み、
手のひらにフィットするのはぐっと握り締めるグリップ。
子供のおもちゃだから
そんなに本格的な迫力はないんだけども
気分だけはそれなりになる
おもちゃのピストル。
かっこいいでしょう!
お部屋のすみっこから出てくるんだから
衣替えの大掃除もしてみるものだね。
リッカの家には
せいぜい水鉄砲くらいしかないと思っていたら
そういえばこんなのも買っておいたような
おぼろげな記憶もなくもない……
拳銃を構えて悪者や無法者を追い払い
荒野を行くリッカの姿が
お店でこれを一目見て思い浮かんだ!
にしてはずいぶん放っておいたけど
今まさに出会えたのは運命だと思うなあ!
だって銃が似合うといえば
みんなの平和を守るポリスマンに
弱きを助けるカウボーイ、
見世物小屋の凄腕や
変わったところでは考古学者なんかもいけそうだけど
なんといっても一番かっこいいのは
深い山を知識と経験だけを頼りに進み
狙い定めた獲物を仕留め
鹿やイノシシをお土産に帰ってくる
あの猟師たちでしょ。
いいよねえ
お肉──
おいしさを思い浮かべるだけで幸せになれるのは
夢とロマンが詰まっているからなのかもねえ。
見上げるような大物さえも
人間の持てる力を使い切って
狩りを可能にするという。
自然と人との全力を尽くしたせめぎ合い──
おもちゃの銃を手にするだけでも
遠い山奥の死闘が聞こえてくるよう。
葉擦れの音だけが耳に痛い静寂を貫いて
隠れ潜んで待つことだけに全てを賭け
耐え抜いた男の固い手のひらから
どーん!
とどろくとき。
山はついに屈服して
ヌシは巨体を横たえるのであった。
なぜタイムリーかというと
なんか聞いた話によると
この近くの山でも冬眠前のクマが姿を見せたとか?
言ってたカナ?
確かそうなんだって。
秋の恵みは畑や田んぼばかりか
向こうから歩いて訪れて
そこへ、ロマンを両肩に背負った誰かが戦いに行くのだろうなあ。
クマ一頭なんていくら食いしん坊のうちの家族でも
晩ごはんに食べきれないかもしれないよ。
でもここって山の中ってわけでもないし
クマを倒せるすごい人はこの辺りにもいるのかなあ。
あんまりうわさは聞かないよね?
厳しい自然との戦いに怖れず向かっていく──
かっこいい人が勝ってくれるといいね!