海晴

『陽光の日々』
掘って
掘って
また掘って
埋めて
埋めて
水をたっぷりあげて──
ママの許可をもらって
庭の隅に掘り返した土は
柔らかく耕して肥料を混ぜたとても栄養のある土。
ここに家庭菜園の本にあるとおりに
種をまいて、毎日水をあげていれば
緑の葉っぱのおいしいコマツナ
ぐんぐん伸びてくるというわけ!
ハロウィンも近いし
私たちのお天気番組でも
楽しいことができたらいいねとママと話して
もう仮装もありふれているし
ハロウィンはもともと収穫のお祭りという面もあったようだし
お祭りといえばわくわくして血が騒ぐのが
長女として生まれ小さな妹たちのお世話をする者の
宿命と言ってもいいようなものだし──
あ、待望の弟は出会ったときにはもう大きくなっていたけれど
同じくらい愛情を注ぐつもりでいるからね!
まあ、そういうわけで張り切って決めたのが
天使海晴生まれてはじめての野菜作りレポート。
ちゃんと芽が出てくるか不安だけど──
こんな不器用な私でも
命を育む大地と向き合って
たくましく生きていくことができるんだと
そう言えるようになるかもしれない!
そもそもママがどこからから借りてきた鍬を扱うのも
自分で言うのもなんだけど
ふらふらしながら腰も伸ばして休みつつ
素人そのままであぶなっかしい──
これでいいのか汗を拭き拭き眺める作業の跡。
うまくいかなかったら全部台無しだということは
今のところはいったん忘れて
まあ、根気が大事だと思って時間をかけたおかげで
見た目だけは本で見たのと同じように形になってきたみたいじゃない?
やっぱりあきらめたらだめよね!
自分を信じることがすべてのはじまり!
あ──なんだか楽しくなってきたから
作業に合わせて歌も自然と口ずさみそうな感じ。
汚れてもいい古着と汗まみれのタオルでいても
なんにも気にならないわ!
まあ、こんな格好だと
様子を身に来たさくらちゃんに
一緒にする? って声をかけても
ぱーっと逃げられていってしまうけれど
いいの!
いつかわかってくれる!
おいしい野菜をもりもり作って見返してやる!
それにしてもさくらちゃんが大事そうに抱えていたお人形といったら
ボーイフレンドと仲良く手をつないでいるところが
まったくうらやましい!
ま、土まみれでがんばっていてもボーイフレンドはできる──はず。
海晴のコマツナが庭一杯に広がって
おいしすぎておなかいっぱいだから食べきれないと家族が悲鳴をあげるまで
2、3ヶ月の辛抱。
それまでは毎日成長を見るのが楽しみな水やりと雑草とりと芽かきと覆いつくりと──
うん、くじけない心が何より大事。
今日はがんばったからたくさん食べてもらえるように
蛍ちゃんもおいしいたこ焼きパーティーを用意してくれているんだって。
中身は何でも好きなリクエストを受け付けてくれるそうだけど
私の一番のリクエストは
みんなが集まって楽しんだりけんかしたりしているところを
写真に残してアルバムに残しておきたいということかな──
こうして支えてくれるみんなも頼りない女の子を動かす大事な力。
野菜作りの過程をテレビで放映することになったら
土いじりだけじゃなく
みんなといる時間も忘れずに収録すると今から決めています!