観月

『神々の華』
おそろしいおそろしい嵐が近づいて
ちびっこたちはぶるぶる震えていたのだが
この街にはまえほど大きな雨も風もなさそうじゃ。
まだ油断するには早いかも知れぬが──
安心して喜んだ子たちの遊ぶのを止めるなにものも
広大な此岸にさえひとつたりともなく
我が家は今日も歌と踊りと
けんかと仲直りの声で満ちている。
お休みの間ずっとこうであればよいな。
ところで兄じゃよ。
不思議とは思わぬか?
よくわからないのにおもしろい歌や
でたらめでも不思議と楽しい踊りを
わらわと小さい子たちは一体どこから
見つけてくるのであろう?
考えてみれば
理屈もなく学んだわけでもなく
なんとなく思いついたことだけで
みんながゆかいになっている──
こんなうれしいことが
毎日何の理由もなく起こってしまうものであろうか?
この歌は──
もっと歌の上手な誰かが
やさしい兄じゃに聞いてもらい
喜んでもらうためだけに
いっさい手段を問わないことにして
わらわのもとへ運んできたのではないかと
ぼーっと理由を探っていたら
ふと閃いたというわけじゃ。
いつも必ずみんなを楽しくする歌が歌えるなら
きっととってもすごい力を持つ
歌の上手な誰かのしわざなのであろう。
む、しかし待てよ。
こんなに力を持つ歌があるのならば
もしかすると兄じゃとみんなのためではなくて
何か別のとんでもないことに利用されているのではないか──
たとえばこの地に台風のおそろしい風がそんなに勢いよく届かないのも
この歌に乗せた力のためかもしれぬ。
それどころか
もっととんでもない魔法を起こすために
この家の無邪気な子供たちが利用されているなどということは?
まあ、それでもよかろう。
マリー姉じゃはこういうのは嫌がるが
わらわはほうきを持って跳ねながら歌うのもありだと思う。
集まるみんなが抵抗できず
つられて舞い踊る奇跡の歌はまたしても家の中に響き渡り
いつまでも止まぬ──ずっと止むことはないのじゃ。