『進路希望』
もうすぐ三月も過ぎていけば
学生の私たちに待っているのは春休み。
今からもう海晴姉さまはいいなあうらやましいなあってうるさいの。
お仕事も大変なのね。
というか海晴姉さまも学生なんだし
いくらお仕事があるといってもそこまでじゃない気もするけど。
ともかくまあ私たちにとっては気楽な三月の
もう少し暖かくなるのをゆっくり待つ時間ね。
そういうものだと
思っていたんだけど……
天使麗は来年度は六年生。
それなりの中学校に行きたければ
成績はある程度をキープしないといけない。
言われるまでもなくわかりきったことよ。
未来への道を切り開くのは
みんなが言うような運とか出会いもあるかもしれないけど
やっぱり頼れるのは自分自身で
努力はしないといけなくて
学生の間は、努力を見てもらえる機会が多いのは学業と言うことになるのよ。
四月の最初のクラス替えには
その……
たとえば……友達と一緒になれるかも大問題だけど
一応進路先として考えている中学校は同じだから
そこは心配いらないと思うの。
今になって気付く
まさかの事実は
このあとで控えている
学年最後のまとめの実力テストで
いい点数をとらなかったら
もしかしてやばいんじゃないかと友達と話したの。
ああ、少し言葉が乱れたわね。
やばいやばい……じゃなくて
あの……なんて言ったらいいのかしら。
上品で育ちのいい人はこういう困り方をしないと思うから
今の私の気持ちをどう言い表したらいいか知らないの。
まあ、つまりね……
私がちっとも悪くないと主張するつもりはないの。
だけどまさか
春休みのお出かけ先を考えるのに
頭の中がいっぱいで
少し授業中に気持ちがお留守になっていたなんて──
宿題もしない立夏ちゃんを叱って
少しは小雨ちゃんを見習いなさいと
自分の教科書を開いたところで
凍りついたように動かなくなる鉛筆の先。
学年最後のテストは来週よ。
大丈夫──
自分が悪いとわかっているのだから
自分で何とかする。
未来へ私たちを運ぶのは
いつだって力強く止まらない動輪と
美しく続く人の石の結晶とも言える鉄のレール。
駅へ会いに行くみんなに恥ずかしい顔は見せられないわ。
……
もしもここ数日
夜更かしの明かりが部屋から漏れていたとしても
あなたは私を信じて叱らないでほしい──と言ったら
本当に望みを叶えて──
そうしてくれるのかしら。
まあ、細かいことを考えている暇はないわ。
テストに向けてちょっと集中するだけ。
あーあ、あんまりうるさく言われないといいな。