星花

『蝶の夢』
どちらが夢でどちらが現実か──
という話もあるそうですが
とりあえずそこはおいといて
星花たちくらいの年頃で人気があるきれいな蝶は
映画の中で輪を作って踊る妖精たち。
麗ちゃんや小雨ちゃんはもう卒業した後だけど
星花はまだ
かわいいですよって見所を探し出して
お姉ちゃんたちに教えてあげたいギリギリくらいの線。
あんなにお祭りが好きでかわいく可憐な姿をして
竜退治の勇ましい英雄には力を貸すこともできる
不思議な存在。
どこにでもいそうな愛嬌があるのに
すごいですよね。
そうなりたい!
とこぶしを握るのは
小さなさくらちゃんたちで
星花はそうだねといいながら
どちらかといえば蝶の羽と花びらのステッキで
なるべくテストでいい点をとれるじゅもんがほしい……
みたいな願いをもつほうです。
みんなの夢が叶うなら
毛虫がそろそろあらわれて
さなぎを経て羽を広げる
今くらいの時期が
そんな気分かな、
雲ひとつない青空──とまではいかないけれど
気持ちとしてはそれくらい言ってみたくなる晴れ渡った日。
また願いをとなえて
廊下をパタパタ駆けていき
助けを求めるホタお姉ちゃんは
片付けの魔力があるとうれしいみたいなの。
うーん……今は地道に人手を集めて時間をかける以外にないですね。
タンスから飛び出る清楚な白やピンクや黄色は
面白がって袖を通して重ねれば──
開けた森や湖の畔に輪になって
夢かと思う景色を見つけてしまったような。
きらきらするのは光を躍らせる鱗粉か、
人魚の尾が跳ね上げる水しぶきみたいな
虹色の部屋の中。
だけど、すぐに暑いーってみんなが服を放り出すから
魔術の発見にはまだまだ遠いという感じです。
まだ初々しい花びらを広げることを知らない
小さな妖精たちの羽は
明日からも家中に散らかっているはず。
うまく毎日の着こなしを身につけたとき
ちゃんと次の魔法を使えそうな第一歩、
いや羽の最初の羽ばたき、かな。
歌って踊るのだけは得意な
夢をまとう子のたまごたち。
自慢のダンスでお兄ちゃんにも美しい風景を届ける日も近い。
そのときは手を取って一緒にくるくる回るまで
逃がさない魔法使いたちにもなるはずです。