吹雪

『データ解析』
人間であるか機械であるかを問わず
記憶領域は無限大ではありません。
取り出す必要のある要素が増加すると参照に時間がかかるため
余裕のあるときにデータの整頓をします。
重要なものとそうでないものを分けて保存すること。
不要と思えるデータがあった場合、捨てる前には気をつけること。
たとえばこれです。
子供の頃の絵本。
人間と暮らす昆虫たちの記録を短くまとめています。
詳細な記述を求めるとしたら充分ではありませんが
図鑑や百科事典を参考に自分で情報を整頓するよりも
ずっとわかりやすく要点を取り出している。
経験の差、使える時間など私とは条件が異なるけれど
短く内容をまとめるのはとても難しい……
そして、この本を何度も読み直して
充分に記憶したと思っていても
主に時間の経過が原因で
細かい部分で思い違いが発生します。
間違えて覚えていたら
もう一度読み返すほかに修正の手段はないのです。
ですからこれは
参照の頻度は高くないけれど
捨てられない本です。
……
もっと詳細な情報が常に参照できる形で手元にあれば
情報量が充分でない本は必要なくて
場所を空けられると考えていたのに
そうではなかったのです。
百科事典では別の本の特質を
すべてカバーすることはできませんでした。
もしも記憶が正確でなかったせいで
害虫から逃げるのが遅れたり
蝶と蛾を区別できなかったらと思うと
当然の帰結
捨てられない本は増えてゆく。
本が増えれば
参照に必要な時間は増えてゆく。
ああ、それでも──
読み返す必要のある本と
まだ見ぬ知識が記された本に囲まれ
身動きが取れなくなる
この掃除中は
ほこりが立つことを別とすれば
それほど気分は悪くないものです。
片付かないことをはたして喜んでよいのでしょうか?
現在の状況を見ると
最初の目的から遠ざかっているのを感じます。
その原因を分析するよりもまず
同じ部屋の星花姉と夕凪姉が帰る時間までに
歩ける場所を空けるのが今日の目標です。