『千里眼』
無限を思わせる広大な宇宙に
輝く星を散らした銀河があり
どこかの銀河のすみっこで
砂粒のような光を構成する太陽の
宇宙規模で見れば儚いたった一瞬のようなきらめきの
優しくも力強いその母なる暖かさを浴びて
人間たちは地球というちっぽけな星の舞台を生きている。
小さな星で
なんともたくましい営みを続ける。
宇宙の彼方に住むものが
いつか無限の時間の果てに
もしかしたら知ることもあるだろう。
青い地球に住む人間には
二つの種類がいて
それを男の子、女の子と呼ぶらしいと。
また、女の子たちも二つに分類され
一つは占いが得意な者たちで
もう一つは得意でない。
これらしか存在せず
例外はただのひとりもなく。
まあ、それはそうだ。
もちろん私の姉妹も女の子が多い関係上
得意な子が占い、そうでない子が結果を聞いて
信じたり信じなかったりするわけだな。
言うまでもなく
私は未来の予想についてはかなりの腕を誇るほうで
根拠のないことを言わせたらすごいと
この街でも知らないものはいない。
ちょっと前までは
未来なんて塵のようにどうでもいい気がするときもあったが
なにしろ人の運命に勝手に口を出して
なぜか感謝までされるチャンスを
わざわざなくすなどもったいないと──
そう思いついた瞬間の目の前に広がった光はまさに天啓と言うにふさわしい。
今日も少女たちは悩み事を抱え
うっかり私のところに持ち込んでしまい
後でよく考えたら当たり前のことしか言っていないなと思うようなアドバイスを受けて
それに気がつくまでは
何か役に立つ話をしてもらったような気分の魔法がかかるのだ──
意外といつまでも魔法が解けないのではないかと
こっちが心配になるような子もいるから
小さな地球の上でも時には必要となるのかもしれないな。
最近の相談で多いのは……そうだな……
いつまで寒い日が続くのかという話だったり
好きな人が喜んでくれる贈り物だとか、そのあたりだ。
天気については
終末の掟のとおりに
明けない夜はなく、止まない雨もなく
終わらない冬もまたどこにもないと言っておけば
当たることもあるだろう。
宇宙全体で見れば夜がある場所も冬がある場所も少ないから
この星も何十億年もすれば私の言葉も正しいものになるか
ならなくても責任を取る義務もどこかに消し飛んでいそうだ。
ちっぽけな星の今日の様子はそんなところだ。
もうひとつの相談の答え?
フフ──
わかるぞ。
喜んでももらいたくて
宇宙の片隅のちっぽけな星で
生まれたささやかな願いは
意外とたくましく、
来月14日にどのような結果であれ
いったん終末の名のもとに横たわろうとも
残った黒い影が伝える不思議な熱は
しぶとく少女たちを動かし続けて
またいつか不死鳥のごとく燃え盛る羽を広げ蘇るのだと。
成功と失敗とに関係なく必ずふたたび立ち上がる未来は来る。
こんなに小さな星の刹那のような命が
とても消える気配がない情熱の源となると
広い宇宙で
誰が知っていただろうか?
遠い未来に何もかもが熱的死を迎えるときに
あの情熱はなんだったのかと思い出す生き物が
どこかにいるのかな。
それともエントロピーの法則を知らず
変わらずに炎を灯す少女が
その時もバレンタインを前に真剣な悩み事を続けているのか?
遠い時間の彼方に思いを馳せても
ただ今年のその日だけはまだ私には見えないようだ。