海晴

『掘り出し物』
そういえば
大掃除はもう済んでいる?
計画的に進めれば
間違いないって
吹雪ちゃんは説明をしてくれたの。
丁寧に書いてくれたスケジュール表は
年末の忙しさに差し込んだ一筋の光。
頼もしいのは
仕事のできる妹!
その上でこんなことを言うのは
あれかなとは思うけど
やっぱり無理だよね!
終わらない。
終わるわけがない!
やっぱりいけないのは
思った以上に物が多すぎるせい?
捨てるのが苦手というだけで
物は増え続けて
減ることは決してないのだから!
でも、捨てられないのも
理由があるのよ。
どこに紛れ込んでいたのか
それはもう海晴が小さくてかわいくて
無邪気で純粋で
身の回りがあまねく愛にあふれていた頃──
つまり、今とあんまり変わっていないくらいの昔ね。
もう何年くらい前になるかなあ──
それはそれは大好きで
寝るときも一緒で
このままずっと一番のお友達でいるんだ、
一生はなれないでいていいんだと
ずーっと思って手をつないでいた女の子。
普通の女の子と違うのは
ちょっとだけ布と綿で出来ていたことだけ!
という愛しいぬいぐるみが
なんと去年の大掃除で出てきた!
いつの間に消えていたの?
もう、一人で眠れないなんて泣かなくなって
海晴は大丈夫だからと思って
お部屋を出て行ったのかも。
あれから時が過ぎて
今、年をまたいで大掃除は中途半端。
このまま続けてもろくに集中できないまま
だらだら時間を無駄にするだけだもんね。
わざわざしまう必要も
どこにもない。
なんだか記憶にあるよりひとまわり小さなぬいぐるみ。
会いにきてくれたの?
それとも、また大事にしてくれそうな新しい友達を探している?
まさか、海晴をよろしくとあいさつしたい人がいるとか!
どこにいても私に気がついて
大事なときに出てきそうな
そんな感じもするの。
かわいいのに、しっかりものなんだよ。
昔からね。
もう同じベッドに入って眠るのはちょっと狭いかもしれない。
おまけに部屋は散らかり気味──
ううん、せめてこの子が落ち着ける程度に片付けておく!
よし、残りのお正月休みの過ごし方は決まった。
久しぶりに一緒にいたら
あれこれ積もる話もあるはずよ。
なになに?
他にもお話をしたい人を誘ってみたらって?
いいアイデアね!
さすが私の親友!
うん?
いい年なんだから体に気をつけて早く寝なさい?
こら!
ぬいぐるみじゃなくって
霙ちゃーん!
後ろでぶつぶつ言わないの!
聞いてくれる?
今日も私の毎日は
忙しくて──
前よりはちょっとにぎやかだよ。