観月

『まどふき』
きゅっきゅっ
ふうふう
きゅっきゅっ
はあはあ
……
みてたもれ!
兄じゃ!
ぴっかぴかの
つるつるじゃ!
お外から拭いていた小雨姉じゃと
手を振り合うと
まるで何もないように見える窓に
ぶつかってしまいそうになるぞ!
というのはまあ言いすぎだが。
年末の鋭く肌を刺す冷たい風は
すっきりと目が覚めるさわやかさ。
お手伝いに呼ばれ
意を決してこたつから出て
首をすくめながらお掃除をしていたら
けっこういい調子になるものじゃな。
普段はそんなに気にしていない
きらきらの窓が
よく見ると……
あっ!
なんだか──
うすーく汚れている──
ような──
建物から外に通じる場所は
あらゆるものの通り道。
いつもきれいにしておくと
悪いあやかしが近くを通っても
これは入ったらすぐ追い出される
信心深い家だな、などと考えて
近づかないこともある。
一方、よい神様が見れば
心がけに感心して
福を授けてくれるかもしれぬ。
きれいにしておいて
損はないのじゃ。
やりはじめれば
みんなわいわい言い出して
のりのりになる。
うーん、でも
ちょっとくらいはかわいい小物が顔を覗かせるほうが
兄じゃを呼んで一緒に退治したり
そうしながら兄じゃの技を学ぶ機会が生まれる。
おもしろくて
いいことばっかりではないか?
しかし、わざと汚れを残しておくと
この時期は鼻息も荒く子供たちが見つけて
きれいにおとしてくれるからな。
とられる前にやっておいたほうが
気持ちもよいというもの。
きれいになった窓を
一息ついて
最初に眺めるのが
布巾を持って働いたものと言うわけじゃ。
ほうれ、
布巾がいつの間にか
いちめんびっしりまっくろくろのくろ。
こんなに汚れを落としたらきれいになる道理だの。
これならもうすぐ福が来るに決まっている。
来年と言わずいつでも
大体なんでもかんでも
やってくるものは大歓迎で迎える準備はできた。
わらわと兄じゃがてぐすね引いて待っているのは
このおうちじゃ。