吹雪

『フェイルセーフ』
数多く設置された安全装置を乗り越えて
どうしても避けられなかったエラーは発生する。
たとえば仮に
プレゼントを包むリボンが簡単にほどけないほど
頑丈であったとするなら。
あるいは、海晴姉が明日のパーティーに備えて英気を養う名目で
シャンメリーを一つ開けて機嫌が良く
プレゼントをしまった場所のヒントのようなものを
口を滑らせたりすることがなかったなら。
また、ユキのもとに届くプレゼントの願いが
今あるぬいぐるみの友達になってもらえる
男の子の設定がある同型ではなく
別の何かを頼んでいたなら。
私が普段
どちらかというと
女の子らしい優しい飾り付けより
機能的なイメージを好んで
見た目が質素であることを考慮することが少ないと
よく知られている事情に変化があったなら、
なおかつ、よく知られていることを私が意識していなかったら。
海晴姉がうきうきして
まわりの目を輝かせる子供たちに
きらきらと泡を立てるシャンメリー
コップに少量ずつ分けて
ついうっかり自分のために残しておくのを忘れなかったら、
そしてその炭酸の味わいがあまり嫌ではなく
好みに合うという相性が
人の感情を快適に作動させ
結果、広範囲に視界が広がったことで
手元の注意力を減退させていると
先に気がついていたなら。
陽気にはしゃいでいるという感情を
私がもっと良く理解していたのなら。
今年のプレゼントに欲しかったものが
子供向けの贈り物としては大き目の科学実験セットで
本当に届くのかどうか
私が疑ったりしなかったなら。
男の子のぬいぐるみだから
リボンと包み紙までその設定に合わせているのだと
開けた後ではなくもっと早く気がついていたら──
自分の分であれば包みなおしても
気がつかないふりができるという油断もありました。
そしてエラーは発生し
対処が求められる。
私はこの一年、
家の手伝いをよくしていたのか、
家庭内で頻繁にやり取りされる
リボンで包む贈り物を用意できるようになったのか。
同年代の子供と比較して
手先が器用だと自信を持って言い切れない事実を前提として
正確な制御が行えるのか。
問題を重ねないうちに
誰かに助けを求めるのが適切なのか。
現時点での私の判断が
誰も悲しませることがないようにという望みを
成立させるのかどうかは
明日の朝まではまだ誰にもわからない形になっています。