真璃

『早送りの時計』
デートの待ち合わせと違って
時間を間違えたんじゃないのっていうくらい
どれだけ急いでやって来ても
なんにも困らないものは
おおやすうりと
サンタクロース。
いいわよねえ。
おおやすうり。
いくら女王のマリーでも
物が増えたらしまわなきゃいけないし
そうなると宮殿がもう一つ欲しくなるから
やっぱりお金はそんなに自由に使えないの。
まあ子供だから
宮殿にしても箱に絵を描くだけね。
あれって上手に描けると
ただの箱も豪華に見えて
しまえる量も増えそうな気がちょっとしてくるのよ。
でもやっぱり、この時期の本命は
どんな願いも叶えてくれるサンタクロース。
なんでもいいとなったらもう──
宮殿のひとつやふたつでは満たされないわ!
この際だから無茶も言ってみるものよ。
まあ、あんまり言い過ぎたら
クリスマスに届くものは
ちょっと違うなんてことになるかもしれないけど。
全てを決めるのは
どれだけ良い子にしていたか──
サンタさんは必ず良い子のすることを見ている。
らしいわ。
お姉ちゃまたちが言うんだから、きっと本当よ。
それにしてもずるいわよね。
おせちもねんがじょうも
来年のお楽しみを話しはじめるこの年末になって──
去年のクリスマスから良い子にしていましたかと聞かれてしまったら
なんだかこの一年を
どう過ごしていたか暴かれるみたいで
緊張してしまうじゃない?
ああ、どうしよう──
マリーは一年良い子だったかなあ。
なんでそんなにながーい時間をいっきにまとめるの!
ずるいずるい、サンタはずるい。
あ、でも考えてみたら
クリスマスプレゼントが届いたら
今年一年を良い子でいられた感じがして
すごくうれしいさわやかな気分で
新しい年を迎えられるのかもしれない。
やだ!
サンタさんったら──そこまで考えて?
でも結局、届くまでのドキドキはあんまり変わりがないわね。
早くその時が来てくれたら──
いえ、やっぱり気持ちの整理ができるまでちょっと待って──
なんて言ってるうちに
その日はやって来るの。
今年も運命の瞬間を迎える覚悟は
マリーの中にできている?
焦ったって早く来るわけじゃないけど
ちょっとでいいから未来を覗けないかしら。
年末の一大イベントを
今年一番の笑顔で迎えたい気持ちは毎年変わらないんだから!