観月

『押し寄せるもの』
楽しきはクリスマス。
準備でわいわい騒がしいの。
まだ時間はだいぶあるが
こまごま用事も多い季節だから
早めにと言い訳をして
待ちきれない子がはしゃいでおるのじゃ。
おうちで用意をしてくれるお料理の話し合いも
今なら多少の無茶もいちおう話はふむふむと聞いてもらえるし
せっかくのお楽しみ会にゆかいな発表もしたい。
すると早く練習を始めるのが良いということになる。
間に合わないよりは先走っても
なんにも損はない。
いや、準備も楽しいできごとのうちだと考えると
早ければ早いほど良いのではないか。
あまりにも早いときはひとりでぽつんとさみしくなってしまうが──
しかし、クリスマスは楽しいものなのに
どうして一人でどんどん進めてもつまらなくなるのであろうな。
お部屋で手を叩いて拍子をとり
おうたを歌っておいわいすればクリスマス気分になれるのに
結局すぐみんなのところへ出ていっては
手品の種を仕込むのや、プレゼント交換の編み物をしているのを見て喜ぶ。
お祭りも記念日も誰かがいなければだめで
後ろから忍び寄ってはいたずらをして
面白い出来事を何もかも自分の手に奪い取り──いや、まあ、分けてもらっている。
おそらく、子供は元気な動物みたいなものだから
クリスマスの準備も狩猟本能でいっぱい狩らねばならぬ気分なのだな。
油断を誘い、食べきれないほど面白いことを両手に抱える。
そうしなければ気がすまない子供が
兄じゃとみんなのところへと走ってゆく!
がーお!
うむ、でも広い世の中には
甘いにおいで誘い込んで生き物を食べる植物も
枝をするする人を吊るして血を吸うせいたかの樹も
植えたとたんに元気に雲の上まで伸びていくつるくさもある。
なにもむじゃきなのは子供や動物だけではない──にぎやかじゃ。
そこでわらわが出し物の練習をしているのは
おもちのおばけごっこ
びろーん。
もっちもちじゃ!
のびるのじゃ!
よくかんで食べる子に弱いぞ。
海晴姉じゃがそれを見て
冬の乾燥とたたかってもちもちお肌になるご利益もくださいというおねがい。
そういうのとはちょっと、うーん──だが
断るわけにはいかぬ。
びろ
びろ
びろーん、の──
食べ盛りを誘うしぐさ。
お役立ちおばけの
れんしゅうちゅうじゃ。
海晴姉じゃもよくかんで食べてまだまだ成長するとよいぞ。